印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 6 -
 どこをどう歩いたのかさっぱり分からないが、ここだという部屋に着いた。スダレで仕切られているだけだが二間分になっているから八畳近くあるだろう。
 入ると伊周さまと定子さまがいらしたので、その前に座って頭を下げる三人である。
「面を上げよ」
 伊周さまだ。
 記憶によれば、伊周さまは九七四年生まれだから、十七歳くらいか。トップ貴族だが、なよってしてなくて、顔立ちもいい好青年だな。年下の俺が言うことじゃないけど。
 やばい、じっと見られている。何か言わないと……
「この度はお助けいただきまして、まことにありがとう存じます」
 もう一度、ふかぶか。
「面白い喋り方やね」
 定子さまに笑われた。
「父、関白と主上(おかみ)による裁定を伝えます」
 伊周さまは丁寧な口調で、俺を見据えるようにして言った。主上ってのは帝のことだ。俺、どうにかされちゃうんだろうか。
「光源氏、あなたは従五位下を賜りました」
「え?」
 さやも驚いているし、ゆかりは「ええっ!?」と言って座っているのに三センチくらい飛び上がった。
 俺もびっくりした。貴族でもないのに、いきなり殿上人だというのだから。殿上人というのは、御殿つまり清涼殿という帝のプライベートスペースに上がること、これを昇殿というが、それができる人という意味で、現代で言えば、天皇陛下のご自宅訪問だな。五位以上でないと上がれないが、五位以上なら昇殿できるというものでもない。六位蔵人だけは配膳の職務上、例外的に昇殿できる。五位がどのくらいの地位かというと、江戸時代でいえば大名の上位クラスである。
「この世のものとは思えぬ青い服を着ていて、突然牛車の前に現れましたね」
 青い服ってのはジーンズのことだよな。今も下に着てるけど。
「はい……」
「未来人と言いましたが本当ですね?」
「はい。何かのはずみで一千年の未来から時を超えてやってきたみたいです。どうやって来のか、帰れるのかも分かりませんが」
 俺って『流星号、流星号、応答せよ』か? って、知らないか。
「そうですか。ひとつだけ約束してください。私に、いえ誰にも未来は教えぬと」
「この後どうなるとか、言うなと?」
「そうです。人の生老病死、栄枯盛衰、知ってどうなるものでもありません。知って抗えないなら、知らない方がいいこともあるでしょう。知らぬが仏とも言いますし」
「分かりました。でも、話さなければいいのですね」
「ええ、より善いようになるなら、あなたが好きに動けるような待遇を用意しましょう。そのための従五位下でもあります。それと、今日から私の屋敷に住まいなさい」
「よ、よろしいのですか?」
「かまいません。私を誰だと思っているのです? 人を見る目はあるつもりですよ」
「……ありがとうございます」
 頭が下がるって本当にあるのな。器量のでかさがハンパなかった。俺なんかを何も言わずに受け入れてくれるなんて。
 マジこの人たちのために何かしよう、そう決めた。
 タイムパラドックス上等、歴史改変クソ食らえ、だ。
 伊周さまの話が終わったと見て、ゆかりが「いきなり五位だって!?」と言い出した。伊周さまは笑って聞いていたので、いつもこうなのだろう。ちょっと前までの凜とした雰囲気は消え去り、妹の友達の話に耳を傾けるお兄ちゃんになっている伊周さまだ。
 ゆかりは「マジで」とかもう使ってる。定子さまは「お兄さまもそう思いますやろ?」などと話を振ったりする。仲の良い兄妹って感じだ。
 にしても、いつ終わるんだろ、これ。
「そうそう、例のアレ! ちょっとやってみようと思うんだけど」
 ゆかりは話を変えた。
「あれって、日記のことですか?」
 さやに「あれ」で通じるのだから、前々から話していたのだろう。
 日記文学、平安時代を代表するものだ。清少納言、紫式部、和泉式部……そのくらいしか知らないが。
「じゃなくてさ、創作? 日記ってホントのこと書くでしょ? なんかつまんないっていうか、盛り上がりに欠けるっていうか。だから、本当じゃないんだけど、面白くって、真名で堅っ苦しいのじゃなくて、軽く読めるように仮名で書いて、綺麗な絵とかも付けたりして……」
 ああ、あるな、絵巻物。それこそ紫式部の代表作だ。まあ、作られたのはずっと後の世のことだけど。
「面白そやね、それ」
 定子さまも書いちゃうの?
「でしょ、でしょ」
「そういうのって何て言えばいいんでしょう? 光源氏さまならご存知ではないですか?」
 さやに聞かれた。
 フィクションで軽い文章で絵が綺麗で、それを現代で言うと……
「ラノベ?」
 言ってから、やってしまったと後悔した。平安文学、絵巻物をラノベ呼ばわりしてしまったじゃないか。いや、別にラノベが平安文学に劣るとかじゃないんだが。
「羅述、ですか……」
 三人は口ぐちに「羅述」「なるほど」などと言っているし。この三人が言ってたら、後世に絶対残るんじゃないかな。平安羅述文学とか……
 で、気づいた。
 源氏物語って元祖ハーレムものだ。しかも、まんま元祖光源氏計画! ただ、ちゃんと読んだことがないので、ツンデレとか幼なじみとかが出てくるのか知らないが。
「さて、私は帰るとしましょうか。光は連れて帰りますね」
 伊周さまは光と呼んでくださるようだ。確か、もう二年もすると子供が生まれるはずだから、BLの気はないだろう。というか、ないことを切に願う。連れ帰るって、お持ち帰りってことじゃないですよね。
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