印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 14 -
「さて、そろそろ参りましょうか」
 伊周さまに促され、帝の時よりどきどきな俺。
 関白さまは、また内裏の中だった。
 部屋に入ると、御簾は上げられていて、飾りは帝のところより簡素である。でも、すっごい偉い人で位も一番高い。帝に代わり朝廷を動かしている人なのだ。
「やっと、来たか」
 ギロっという感じでこちらを見ている。
 道隆さまは、満三十七歳くらいだったと思う。現代人から見るとまだ年寄りなんかじゃなくて、貫禄というかオーラというかがかなり凄い。
 オーラというと、『海と陸の間にあり、輪廻する魂の休息と修練の地』を連想するが、海と陸の間というのが分かりづらい。俺なりの解釈では、『ミニスカとニーソの間にあり、輪廻する魂の、休息と修練の場所』である。絶対領域とも言うな。
 現実逃避終わり。
「父さま、光が怯えますから、ほどほどにしてください」
 そう伊周さまに言われると、道隆さまはニヤっとして、怖いオーラが減った。
「いやぁ、すまん。最初にこれをやらないとナメられると思ってな」
「誰も父さまを舐めませんよ、天下の関白藤原道隆さまですよ」
 道隆さまにツッコめる伊周さまって凄げぇ。
「まあ、光源氏とやら、怖がらずともよい。ワシはお前が来るのを心待ちにしておったのだ、取って食ったりせん」
「はい、わたくし、ただいま主上より一条という姓を賜りました、光源氏こと一条光です」
「うむ。そう名付けたのはワシだ。主上には言うておったが、先に言われてしもうたか」
 多分、普通に喋ってるのだろうけれど、ちょっと怒っているように感じてしまう。直接話をするだけでビビるよな、帝にはそうでもなかったけど。
「晴明の話はしたか、伊周」
「まだです」
 伊周さまは俺の方を向くと朗々と言われた。
「その者、青き未来の衣をまとい、牛車の前に降り立ちけり──」
 な、何だ、いきなり。
 何か似たような言い伝えを聞いたことがあるけど、向こうのよりかっこ悪いと思うのは俺だけだろうか。青いってジーンズか? にしても、金色の野じゃなくて牛車の前かよ。
「安倍晴明さまの予言です。その者は私たち親子から災いを退けるから、手厚く迎えるべし、と」
「そういう訳だ。関白となってわずか数日でお前が来たのも理由があるに違いない」
「しかし、晴明さまは、決して未来を聞いてはならぬと仰せでしたので、私も聞かないようにしたのです」
 それでか。俺みたいなのを住まわせたり、丁寧な扱いをしているのは。
「皆にも未来は聞くなと言うてある。ワシにも言うてはならぬ」
「わかりました。関白さま」
 満足そうな道隆さまに目配せされ、伊周さまは「では、私はこれで」と退室された。
 み、道隆さまとふたりっきりっすか!
「ただ、ワシらに不利なことをされるのも困る。お前はどう考えておる」
「私は……伊周さまには恩義があります。主上と定子さまは仲睦まじく微笑ましく、主上のお幸せと安泰、伊周さま定子さまが安寧でいらっしゃり、道隆さまの権勢が続くことを心から願っています」
「むぅ、満点だが、本心か? よもや上手を言うておるだけではないのだろうな」
 こやつ喜ばせよるという感じに、道隆さまの表情がほころんだ。
「もちろんです。道隆さまは何を一番危惧されていらっしゃりますか?」
 いかん、噛んだ。
「今のところは、ない。と言っておこう」
「あの、お教えしてはならぬということですが、諫言はお許しいただけますでしょうか」
「ふむ、何かあるのか?」
「未来を教えるなということですから、今は言えません。時が来たら、身分を超えてお話させていただきたいことがございます」
「もちろん、許す。そのためにお前が来たと思っておるのだから、聞く耳を塞ぐことはありえん」
「ありがとうございます」
「よし、気に入った。屋敷を手配させよう」
「ま、待ってください。伊周さまにはご迷惑かもしれませんが、まだこの世に慣れていません。お教えをいただきながら、しばらく置いてもらいたいと思いますが」
「ああ、構わん。伊周も今後妻を娶り、ややこもできるだろうが、それでも良いなら伊周のところを我が家と思うていくらでも居るが良い」
「ありがとうございます」
 同じようなやりとりだが、勘弁してもらいたい。俺だって『御意』とか『ありがたき幸せ』とか言いたいんだが、それって武家言葉や後の創作の可能性もあるから、避けざるをえないじゃないか。今までのだって、通じているようだからいいが、これだって正しいのかどうかなんて分からない。
「ひとつだけ、伺ってよろしいでしょうか」
「何だ?」
 怒ってないですよね? 怖いんですけど。
「定子さまが皇后となられるのはいつのことでしょうか」
「それを知っておるとは、まさしく未来人。まだ秘密だが、神無月にはと思うておる」
「そうですか、それはお待ちいただくのが吉でございます。皇后にも中宮にもしてはなりません」
「む、そこか。まさしく、皇后を分け中宮にと思うておったが、何かあるのか?」
「もうお考えになられているのですから、話してもいいでしょう。それは後の災いの芽となります」
「まるで心を読まれておるようだな。待つとはいつまでだ」
「長くとも来年の冬まででございます」
「そうか」
 道隆さまの目が見開かれる。怖いからやめて欲しい。
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