印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 15 -
 道隆さまがうなって考えている間を使って、説明しておこう。
 この時代、天皇の即位を賭けた皇族の戦い、皇后・中宮を賭けた女の戦い、関白などの地位を賭けた藤原氏内部の戦いがあり、それらが複雑に絡まり合っている。まあ、その根本は権力に固執する藤原氏にあると思うのだけれど。
 道隆さまがしようとしていたのは、定子さまを三后(三宮とも)に入れること、つまりは皇后にすることだった。簡単に言うと、女御や更衣という複数いる地位ではなく、皇后といういわば正妻にしようということなのだ。親心としては分からなくはない。三后の、太皇太后は先々代、皇太后は先代、皇后は現在の帝の后というのが本来の意味だが、定子さまが帝の后となられたら皇后になるのだろうというのは甘い。
 ちょっと複雑だからじっくり聞いてもらいたい。
 現在、太皇太后は三代前の冷泉(れいぜい)天皇の中宮昌子内親王、皇太后は先々代円融天皇の女御で一条天皇の生母である藤原詮子、皇后(中宮)にはこれも先々代の中宮である藤原遵子がいる。先々代関係が二人いるが、彼女たちが入内した時には、既に円融天皇には中宮?子がいて、その?子が亡くなったため、詮子と遵子で空いた中宮の座を争ったのである。きっと昼頃にやってるドラマとか昔の少女漫画みたいだったんじゃないだろうか。当時の関白頼忠の権力によって頼忠の娘である遵子が皇后の座を得たのだが、遵子は男子を産むことはなく、女御詮子の男子である懐仁親王が即位し、生母詮子は皇太后となったのだ。この三后が存命なのだから、つまりは空きがない。皇后はいるので、定子さまが皇后になるということもできないという訳なのだ。なお、先々代の円融天皇は存命である。
 かなりごちゃごちゃしてるだろ。
 で、道隆さまが考えたのは、本来、皇后とイコールな中宮をふたつに分け、定子さまを中宮にして、皇后と中宮の両立、つまりは四人を三后にしようということだ。
 詭弁だな。
 しかも史実では、皇后のお世話をする中宮職を廃止して、代わりに皇后職を作った。皇后が中宮だと都合が悪いからだろう。
 これはまだ分かる。
 で、中宮定子さまのお世話をする中宮職を新設するのだ。
 なんでよって感じだろ?
 これがいけないのは、道隆さまの死後だ。次に関白在任七日で亡くなった道兼さんがいて、その次があの道長で、定子さまを追いやるために、定子さまを皇后にして、中宮には自分の娘、彰子を入れたんだ。以降、定子さまは不遇にあえぎ、若くして病死、伊周さまも没落の一途を辿ることになる。
 で、道長は、この世は満月のごとく欠けるものなく全部俺のものってなるわけだ。
 いずれにしてもまだ先のことなので、今は何もしていない道長に怒りをぶつけてもしょうがないし、彰子ちゃんはまだ満二歳だから、それををどうこうしようという気もない。
 未来の解放軍のリーダーを亡き者にするために、ロボットを送るようなもんだ。あれって変だよな。失敗したら、次に送り込むのは、それより前にしないといけない。後に送り込むって変だろ? あのコンピュータはバカなんじゃないだろうか。
 その彰子の女房に、あの紫式部や和泉式部がいる。まあ、ゆかりは今のところ、BLに走ってるみたいだから、後世のためには出さなくてもいいかもしれないのだけれど。
 で、俺は、来年には皇太后に空きが出るのを知っているんだ。
 女院(にょいん)、東三条院に生母詮子が成られるからだ。歴史上初の女院で、これは上皇の院庁に倣ったものである。
 来年二月に先々代円融天皇が崩御することがきっかけになって、詮子は出家、秋には女院となるわけだ。遵子も出家するが、皇太后になる。来年のそれまで待てば皇后が空くから、定子さまを順当に皇后である中宮にできるって寸法。崩御が二月なので、帝に皇太后を女院とするのを勧め、時期を早めることも道隆さまならできるかもしれない。
 まあ、話すとしても先々代の崩御後だけどな。
「よかろう」
 うぉ! びっくりした。急に喋らないでもらいたい。
「お前が言うのなら、そうせねばなるまい」
「賢明なご判断です」
 もういっこ言っていいかな?
「もうひとつ、いいでしょうか」
「うむ」
「お酒を控え、食べ物も野菜を増やしてください」
「お前はうちのと同じことを言うのだな」
 また沈黙。
「お前はそういうことも詳しいのか?」
「それほどでもありませんが、少しは」
「では、今度、何か食わせてくれ。酒を飲むなというなら、他に楽しみがなければならん。その責任は取ってもらおう」
 マジか?
「できる限り、で、よろしければ」
 道隆さまは満足されたようだ。
 いつ来てもいいし、自宅が留守でも上がって好きにしていろとまで言われた。ただし、娘には手を出すなよ、ギロリって。
「で、仕事なのだが」
「はい」
 どきどき。
「何ができる」
「えっと、昨日から考えていたことがあるのですが、お聞きいただけますか」
「うむ」
「未来にあったもの、便利なものなど、仕組みでも道具でも考え方でも、そういったものを作ったり、使ったりする役目が一番お役に立てるかと思います」
「なるほど、道理だ」
「それによって、ご権勢の安泰、主上、定子さまのお幸せも守りたいと思っています」
「して、どうやってそれをする」
「ひとつは、そういった職を新設し、思った通りに事が運べるよう関白さま直属にしていただきます。職の責任者は伊周さまに兼任していただき、俺はその下に置いてもらいたいと思います」
「よかろう」
「それで職の名前なのですが、『枕部(まくらべ)』というのはどうでしょうか。物のよりどころ、事のはじめという意味での枕です」
 文字を説明した。
 まあ、本当は枕草子の枕からだったりするが。
「なるほど。その佐(すけ)ということになるな」
「はい。伊周さまは別当(べっとう)といったところでしょうか」
「ふむ。まあよかろう」
「ありがとうございます。あの、枕部には裏の名前もあります」
「裏の名前? それは、何だ」
「別の名前です。音としては同じですが」
 これも文字で説明した。
「なるほど、『馬鞍部』か。何をしようというのだ?」
「やることは同じです。京、関白さま、主上と定子さま、伊周さまも安寧にお連れする、馬鞍となります。あるいは警備の意味の騎馬も表します」
「うむ、善いな」
「ありがとうございます。ただ、伊周さまにはまだご相談前なのですが」
「よいよい。あいつなら喜んでやりそうな事だ、ワシからも言うが、お前も帰ったら言ってやってくれ」
「分かりました。手柄を立て、伊周さまの官位引き上げに繋がるよう精進いたします」
「うむ。存分にやるがよい」
 道隆さまは満足そうで安心した。
 ということで、俺は枕部佐(まくらべすけ)になってしまった。
 何かあったら必ず話しに来い、暇があったらいつでも来いと再三いわれて解放された。
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