印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 16 -
 部屋を出ると、聞き耳を立てている男を発見。見つかって、挙動不審な様子だ。多分、二十代前半くらい。
「何か?」
 無視すると何をされるか分からないので、声を掛けた。
「わ、私にも何かございましたら、お教えください」
 怯えているのが声でも分かる。
「あなたは?」
「お、弟の道長です……」
 消え入りそうな声だが、道長……だと? 落ち着け、こいつはまだ何もしていない。
「もし、あなたが兄道隆さまを敬っているなら、きっと良いことがあるでしょう。自らが権力を欲したとき、あなたの体は蝕まれ、目も見えなくなってしまいます」
 問題は道隆さまの没後なのだが、それは言わない。
「わかりました。ありがとうございます、ありがとうございます」
 はぁ……そんなに悪い奴じゃないのかも。ちなみに、権勢を欲しいままにした道長も糖尿病に苦しみ、目も見えなくなっていったという史実がある。
 定子さまのところ、本部とやらがどこか分からない(どこかを奥ぅに行くらしい)ので、道長に案内させることにした。年上だし正三位だが、そんなことは構わない。
 実際、喜んで道案内してるし。
 ここでございますという部屋の前に着いた。
 わいわいがやがや、聞こえているのはほぼゆかりひとりの声なのだが、筒抜けだ。えっと、ノックじゃないよな。定子さまの自室なんだから、他の名前を呼ぶのも変だし。
「定子さま、光です。約束通り伺いました」
 きゃぴっていた声が止まって、「光だ」という声がした。
 道長に礼を言って帰ってもらう。
 出てきたのもゆかりだった。
「お、やっぱりゆかりが出てきた」
「おっそーい! もうちょっとで来なかったら、帰ろうって言ってたんだからね」
 頼むから『あ、あんたを待ってたわけじゃないんだからね』と言って欲しい。
「あ、あんたを待ってたわけじゃないんだからね」
 俺がびっくりした。もしかしたら俺はエスパーかもしれない。
 関係ないが、こういう口調をツンデレと称している。文章としてそのまま読むと、どこがデレているんだという人も多いだろう。現に、そういうセリフ回しだけのアニメも多いかもしれない。
 違うのだ。
 これだけのセリフの中に、ツンとデレ両方を表現しなくてはいけない。デレが表現できていないなら、ツンデレとは言えない。逆に言えば、ツンな台詞をデレた感情を込めた風に脳内補完して読まなければいけないのだ。後に伊周さまと定子さまの妹である原子(もとこ)、モトちゃんとのツンデレ対決があったりするのだが、それはさておく。
 定子さまの私室に入ると、書き散らされた紙が散乱していた。
 紙は貴重品で、枕草子は清少納言が紙を沢山もらったところ、何か書いてみたらと定子さまに言われて書き綴ったという。まあ、現代人から見ると、そんなに貴重でもないのだが、ゆかりも貴重品とは思っていないのかもしれない。しかも何かを食い散らかしてもいるようだ。女御さまはそういうものがいくらでも手に入り、それ目当てにアリのような人たちが群がるのかもしれない。
 定子さまもいらしたので、挨拶をして座る。
 で、後はやることがない。
 人は、自らの存在意義を考える時がある。なぜ神は俺を千年以上前にタイムスリップさせたのか……ではない。なんで、『俺がここにいなくちゃならないんだー!?』である。ただ福助人形のように座っているだけで、女の子四人で話が完結していて出る幕もない。
 だったら呼ぶんじゃない!
 みんな優しいから、「あんたはどう思うの?」だの「懐くん、えろう気に入ってたえ」とか「退屈ではないですか?」やら「……萌える?」などと話しかけてきてはくれるが。
 既に『マジで』というのがこのメンバーに定着していることに戦慄を覚えた。枕草子の『いとおかし』が『マジいいし』になってたらどうしよう。
「なぁ、この中で料理が一番上手なのは誰だ?」
 暇なので、ふと思ったことを聞いてみた。すると、それまでの喧噪が嘘のようにピタっと止む。あれ? 時間は止めてないよね。
 顔を見回す女の子たち。
「私は少しはできますが、上手かというとそれほどではないかもしれません」
「う、ウチは料理はせえへんなぁ」
「……料理は食べるもの」
「料理はするなって、鞍馬の天狗に脅されてるから」
 名誉のために、誰がどれを言ったかは書かないでおこう。貴族でお嬢様とかそういう人たちだもんな。
「料理がどうかしたのですか?」
 さやだけだ、そういうの、他の子たちは目すら合わせないようにしている。
「ええ、さやさん。道隆さまに料理を作るように言われたのですが、どんな材料があって、どんな料理ができるのか、ちょっと聞いておきたかったものですから」
 まぁ! と驚くさや。
「父さまも酔狂やね。おのこに料理を作れやなんて」
 あ、そうか、定子さまなら、好みとか知ってるかもしれない。
「作るのはいいんですけど。定子さま、道隆さまはどのようなものがお好きなのですか?」
「親子とはいえ、一緒に食事はようせえへんのやけど、季節のお酒としょっぱい肴ばっかりなんよ」
「野菜とかはお嫌いで?」
「あんまり食べはらへんえ。いっつも食べぇ食べぇ言われて、なおさら嫌いなった言わはって」
「なるほど」
 自らの属性を暴露するようだが、この京都弁の『はって・はる』がツボだったりする。
 それはさておき、庶民なら酒なんてほとんど口に入らないだろうし、食べても動くからエネルギーとして消費されるが、貴族は動かざる事山の如しを善しとするから、生活習慣病になっても当たり前かもしれない。この時代の酒って甘いしな。
「ねえ、光、ちょっと書いてみたんだけど、読んでくれない?」
 料理話に業を煮やしたゆかりが別の話を強引に振ってきた。
「いいけど……」
 渡されたものを読むと……読めない。
 だが、読めないなどというと、どれだけ罵倒されるか想像に難くないので絶対に言ってはだめだ。にしても、この絵は何だ? 青少年保護育成条例とかで捕まるんじゃないだろうか。船の舳先でタイタニックしてるけど、やっぱどっちも男だよな、裸の。
「ごめん、今ちょっと考えたいことがあるから、借りてもいいか? 明日にでも読むから」
「いいけど、なくさないでよ」
「ラジャー」
「……裸邪?」
「あ、分かったってこと」
 しずかはそういうとこ的確に入ってくるよな。
 関係ないけど、ラジャーって漢字で書くなら『了写』がいいと思う。指示を受け取った、コピーしたって意味だから。映画とかで「ドゥユゥコピー?」って言ってるだろ?
 それはともかく、誰かに読んでもらうしかないな。
 中身は腐ってるはずだから、伊周さまにそんなの頼めない。あかねはムリっぽいか。伊佐は読んでくれそうだけど、そっち属性があったら俺が危ないし。
 後、知っている人は……
「みんな、悪い。ちょと用を思い出したから先に帰るな。じゃ、ゆかり、これ借りてくから」
 止められる前に、急いで部屋を飛び出した。
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