印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 20 -
 俺はゆかりたちに引っ張られ、伊周さまとは別の牛車に押し込まれた。牛車ってのは後ろから乗って、降りるのは牛を外して前からとなる。俺が最初に来たときは緊急事態ってことで、牛を外してなかったけど。牛車を後ろから降りると物を知らないってバカにされるらしい。
 牛車二台で行くらしいが、メンバーの再考を願いたい。そうだ、女の子三人と男三人で乗り分けるのはどうだろう。
 で、ふと思い出した。
 ゆかりを誘ってみたらという伊周さまに、勘弁してくださいと答えたよな。俺は、荘園に連れて行くのを勘弁してくださいと言ったつもりだったのだが、伊周さまは、荘園に行くのは決まりで、誘うのができないと勘違いされたのかもしれない。つまり、善意で、俺の代わりに、ゆかりたちを誘ってくれたのだとしたら、もうどうしようもないな。
 仕方なくいつもと変わらない状況を甘受し牛車に揺られた。
 当たり前だが、牛車なんて乗らないで歩いた方が早い。牛歩戦術というのがあるが、そのオリジナルの牛歩だもの。貴族の優雅な乗り物だと思っているかもしれないが、実は牛車に乗ることは良く思われないので、かなりの上位クラスでないと使うべきじゃない。帝の牛車での行幸にもお付きは馬であって、牛車何台もということは本来ありえないことだ。江戸時代の参勤交代で籠に乗ってるのが殿様だけなのと同じである。
 だからもし、男だけで行くなら牛車ではなく馬を使うはずだ。速いし、貴族の男はみんな馬に乗れるから。俺は乗れないけど。馬鞍部なんて裏設定作ったのだから、乗れないのも困るな。練習しないといけない。
 牛車は基本が四人乗りだが、二人乗りのもあって、最大で六人乗りのもある。現代の乗用車とさして人数は変わらない。
 ふと、目的地が荘園としか聞いていないことに気づいた。
「なあ、伊周さまの荘園ってどこにあるのか知ってるか?」
「知るわけないじゃない」
「……知ってる」
 流石はしずかだ。
「どこ?」
「……九里林」
「クリリンのことかぁ!」
「うっさいわねっ! 何いきなり叫んでんの!?
「……九里林のとこ」
 これを条件反射というのだが、この時代の人は知らないだろう。まあ、場所は聞いたってどこなのかはさっぱり分からないけど。
 しばらくして思い立ったので、持ってきた風呂敷に包んだ箱を取り出す。
 風呂敷というのは、字のごとく、風呂に敷く布のことだ。この時代、風呂というと蒸し風呂、つまりサウナしかなく、それもあまり入らない。当然、臭いも出るから、それを隠すためにお香を焚きしめる。この辺り、後世のフランスで香水が重用されるのと同じ理由だな。
 奈良時代から風呂敷というものはあるが、それが何かを包んで運ぶのに使われるようになるのは江戸時代になってからのことで、家に風呂を作るのは火災の原因となるため禁止されてるから銭湯に通うんだが、体を洗うものや着替えと風呂敷を持って行くことになるのだが、それらを風呂敷で包むようになったのが始まりだ。だから、風呂敷で荷物を運んでいるのが、不思議というか奇異に見られるのは当然だろう。
 中身は、朝食前に出発するというので、早起きして料理を作っておいたものである。
 道隆さまの料理を作るために、料理を試していて厨房に立つことが多いからこそできることだろう。貴族は男女を問わず、厨房に立つことはまずない。ちょっとは作れるというさやの方が例外で、何もできないというこいつらの方が普通かもしれないのだ。
 ふたつ入れておいた箱のひとつを手に取る。
「ちょっと渡してくるな」
 さっと牛歩戦術を続ける牛車の後ろから飛び降りた。貴族なら絶対にしないな。で、伊周さまの牛車に走ると、その箱を手渡した。
「食べ物が入っています。そのまま手で掴んでお召し上がりください」
 そういってまた自分の牛車に戻った。馬車とか自動車だと命がけになるかもしれないが、歩くより遅い牛車なら簡単なことだった。
 牛車に戻ってみると、既にふたりは箱を勝手に開け、あまつさえ中のものを食べ始めているではないか。
「何これ? 美味しいけど」
「……これ、好き」
 風呂敷は存在していて違う使い方をしただけなので、実用新案というところだが、料理はぴっかぴかの特許モノで、食の歴史を覆すからふたりには詳しく言えない。
 まあ、食ってりゃ同じようなものだが。
 何を作ったのか、だ。
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