印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
携帯・スマホからもご覧いただけます⇒

第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




  (ルビ表示が正しくない場合)


横 縦     並 大 特大     G M
- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 22 -
 やっと荘園に着いたのは昼をかなり回ってからだった。
 昼ちょっと前に着いて朝食の予定だったのが、いなり寿司と卵焼きを食べたので、途中で休むことになり、結果、ゆかりたちがはしゃいで遅くなったのである。
 あかねと諾は屋敷に入って行ったが、俺たちはお茶作りをしているところに向かった。伊周さまと俺、当然ゆかりとしずかも一緒だ。ほとんど物見遊山というか、修学旅行である。
 伊周さまは使用人を呼び、茶畑を案内させた。
 なるほど茶畑だが、近代の綺麗に整えられた茶の木ではなく、普通に育った低木という感じだ。
 今は皐月で、新暦だと六月中旬くらいだから、本当なら新芽は既に摘んであり、二回目の茶摘みというところだろう。
 現代でのお茶は四回摘まれる。最初に摘んだものが一番良いとされるが、二回目もまずまず、四回目になると晩茶といい、茎が多くなってしまう。番茶にするのが晩茶だが、番茶というと茎茶の焙じ茶を指すことが普通だろう。番茶の対極ともいえる玉露というのは、覆いを摘み取る二週間ほど前からすることで日光が当たらないようにしたもので、抹茶にするのもこれと同じ手順で摘まれたものである。
 紅茶の方では、最初の摘み取りをファースト・フラッシュ、二度目をセカンド・フラッシュというが、ファースト・フラッシュ後に残ったものを摘んでファースト・フラッシュ・ビンテージなどというのもある。
 平安時代のお茶は薬でもあり、普通に飲まれるものではなかったため、適当に摘んでお茶にしているようだ。だから摘むように言えば、今日みたいにいつでも摘んでくれる。なるべく先から三枚を摘むように頼んでおいたものだ。
 既に茶摘みしたというので、茶を作っているところへ移動した。
 本当に視察か取材だな。
 乱暴な言い方だが、お茶は発酵させないようにすると緑茶になり、少し発酵させるとウーロン茶になり、もっと発酵を進めると紅茶になる。発酵というと酵母のような細菌を連想するかもしれないが、お茶の発酵は葉に含まれる酵素によるものだ。
 まず、いつものお茶作りを見せてもらう。摘むように頼んでいた分とは別の茶葉である。
 ということで団茶作りだ。
 茶葉をまず臼でつく。まるで餅だな。
 ついていると、粘りが出てくる。
 それを団子にして、その表面に麹をまぶして置いておく。
 日が経つと茶色になっていき、期間が長いほど濃い茶色の団子になるそうで、その方が珍重されるという。茶色とは、この団茶の色から出た言葉なのだ。
 これを、どうやって飲むかというと、必要な分量ほぐして煎じる。煎じ薬だと思えば納得だろう。これに甘葛や生姜汁を入れて飲む。
 団茶作りが終わったので、伊周さまに許しをいただいてから、指示を出した。摘んでもらった分をふたつに分け、ひとつをすぐに蒸すように、もうひとつは明日まで風通しの良いところに広げ、そのままにしておくようにである。
 蒸された茶葉を板の上に広げ、扇であおいで水気を飛ばしながら冷まし、手で揉んだ。やったことはないが、テレビの見よう見まねというやつな。目的が、茶葉を細長く丸めることなので、力を入れすぎて葉が千切れるようではいけない。
 しばらく揉んでいると、よく見る緑茶のように細長く葉が丸まっていく。
 何か嬉しい。
 それをよく広げ、扇であおいで乾燥させ、またしばらく揉んで水分が出てきたら、広げて乾燥を繰り返す。本当はちょっと加熱して乾燥させたいところだが、そんな微妙なことができる設備も用意もないので自然乾燥しかない。揉んでもそれほど水分を感じなくなったので、広げて干しておく。
 また後で来るからと使用人に伝え、屋敷に戻っての夕食である。
 ゆかりは女も酒を飲むべきだと主張し、伊周さまは笑ってお許しになり、しずかと諾はちょっとだけ、あかねは飲まなかった。ゆかりの前世はきっとザルかジョーゴだ。
 夕食後、お茶の様子を見に行き、広げ直したり、生の茶葉の様子を見たりした。酔っ払いの少女たちも付いてきたのだが、俺がお茶を見ている間にゆかりは寝てしまった。しずかに連れていかせるのはムリなので、俺がおんぶするしかなかったのだが、ツルペタなので背中に何かを感じることもない。
 ゆかりを寝かせ、しずかを残し、割り当てられた部屋で俺も就寝した。
 
 翌朝、起きるとすぐにお茶の様子を見に行く。生の葉は果物のような香りになっていた。緑茶も広げ直すと、結構乾いているみたいだ。
 で、朝食後、今度は諾とあかねも一緒だから大勢の見ている前で、発酵させておいた茶葉を揉む。
 俺が取材されている側に思えてくるな。
 これは何が目的かというと、葉に傷を付け、発酵を早めると共に茶葉を取るためだから力を入れて千切れさせる。広げて細かくなった茶葉だけを集め、残りをまた揉む。疲れたので途中から使用人に代わってもらった。
 できたお茶を器に入れ、濡れた布を被せて更に発酵させるためにしばし置く。一、二時間置きたいが、これは適当。
 作業後は、作ってあった団茶を飲むことにした。
 お茶やコーヒーを『いれる』というのに何種類かの漢字があるよな。代表的なものでは、『煎れる』というのは煮出すことで、『淹れる』というのはお湯を注いで抽出することを表す。コーヒーでいえば、煎れるがパーコレーターやサイフォン、淹れるがドリップということになるな。インスタントだと入れるだろうか。
 もしかして、と思い、お茶を煎れずに淹れてみた。中国のお茶の作法では、最初に注いだ分は捨てて、二回目以降を飲むから、最初のは捨てて、次のを器に注いでみたのだ。
 そうやってみると、こっちの方が美味い。
 煮出したものは濃すぎるし、雑味もあったが、これだとすっきりしていて甘みも感じられた。なんか、ウーロン茶に近い感じだ。
 しばし休むと、また作業である。
 鍋(中華鍋みたいなの)を弱火で加熱させ、お茶を空煎りして発酵を止めて、乾燥もさせる。加熱しすぎて焙じてはダメだ。
 これはすぐに終った。
 緑茶と紅茶をそれぞれ袋(布製)に入れ、それぞれ黒漆塗り金蒔絵の小箱に入れておく。もの凄く高級品になった感じだが、白木だと臭いが移るのではと思ったからだった。
第1巻:page 23 < 次  枕部之印  前 > 第1巻:page 21

【お知らせ】
広告のお申し込み・当ページプログラム販売など承ります。委細メールにて。
(著作表示より送信)
 
▽ 基礎知識 ▽

平安用語の基礎知識
 
関連用語の基礎知識