印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 29 -
 何事もなく出てこれた。料理の準備というのは使えるな。
 さて、料理だが、まず人数が結構いる。道隆さま、伊周さま、定子さまと、さやとゆかりとしずか、信長もいるし、諾とあかねと、俺か。十人だな。何か、他にも来そうな予感がする。十二人前くらいあれば大丈夫だろ。けど素人料理にはちょっと多すぎないか?
 まあ、にがりは、また必要だろうと思い、作ってあるし、甘葛も買い足してある。材料的には多分大丈夫だ。
 歩いていると御用達の振り売りがいたので、屋敷に来るように言う。往来で売り物に何があるかなんて、殿上人が見ることはできないよな。
 一緒に歩いて行く。屋敷に一歩入ればこっちのもの、何があるか見せてもらう。
「イカはないか……」
「京では干物のスルメしかあらしまへんけど」
 だよね。
 イカ飯を作りたかったが、生のイカなんて手に入るわけないか。魚介類はとにかく干物ばかりだ。
 ヒジキと昆布があった。これはずっと昔から食べられていたものだ。海藻と貝と魚、栗などの木の実が、稲作が発達するまでの主食なのだから。
 ネギ、大根、カブ、ゴボウを買った。まあ、あった野菜を全種類買ったようなものだが、明後日まで大丈夫なものを買い、後は市に買い出しに行こうと思う。
 結構普通の野菜があると思われるだろう。
 野菜類の日本到来は、平安期まで、室町末期から幕末まで、明治から戦前、戦後以降に分けられる。鎌倉・室町時代が抜けているのは、ほとんど入ってこなかったからだ。ひとつの理由として、新大陸発見以降にならざるを得ないものも多数あるからで、大航海時代以降は日本まで直接南蛮船が来るようになるのである。
 野菜としては信長も平安時代にそれほど違和感がないだろうし、現代人が見ても、これだけあればという感じになるはずだ。
 しかし、決定的に違うのが味噌、醤油、とうがらしが、戦国時代にはあったことだろう。平安時代、味噌は高級官僚の給料として米と共に支給されているが、一般に広まるのは鎌倉時代になってからになる。とうがらしは新大陸発見を待たないといけない。
 信長が一番困りそうなのは八丁味噌がないことに違いない。尾張名古屋は、なんでも八丁味噌だが、信長、秀吉、家康という三英傑も八丁味噌なのだ。三河の家康は違いそうだが、八丁村で造られていたから八丁味噌というのであって、その八丁村があるのは三河だったのである。
 振り売りに野菜を納めさせると、自室に戻り、何を作るか考える。
 いなり寿司は作らないと女性陣が納得しなさそうだ。鶏には抵抗があるようだから、鴨か雉でもあったら使ってみるか。何かの魚も欲しいが、干物では料理も限られるな。
 信長は、美濃の干し柿、アワビ、湯漬けが好物らしい。桶狭間に赴く際、敦盛を舞って(本人は「戦の前に舞う意味が分からない」と否定)、湯漬けをかき込んで出ているくらいだ。ただし、信長好みの湯漬けは八丁味噌を使ったものなので、今は作れない。
 ちなみに、湯漬けは近世まで朝食として一般的だったもので、朝食として腹ごしらえをして出陣したという意味だろう。保温ジャーとかがない時代、夕食で飯を炊いたら、必然的に朝食は冷や飯なのだから、お湯を掛けて食べるのが普通だったのだ。
 そうだ、ういろうを作ろう。ういろうなら作ったことがある。ただ、電子レンジで作ったので、ここのもので作れるかという不安はあるが。
 あかねが着替えの手伝いに来た。呼ばなかったからなかったからだろう。
「来ちゃった」
 あかねは、俺の言われてみたいランキング上位の言葉を言った。
「あ、ああ」
 期待やら何やらが膨らんじゃう。
「壮呂さまが」
「あ、そゆこと」
 絶対、からかってるよね。
 信長が「只今戻った」と入って来て、そのまま座り込んだ。着替えを待っているのかもしれない。
 じゃ、着替えるか。
「そうそう、あかね」
「はい」
「明後日、道隆さまにここで料理を振る舞うことになった」
「分かりました」
「それと明日、買い出しに行くので付き合って貰えるか?」
「もちろんです」
 着替えが終わると、あかねは一礼して出て行った。
「信長は着替えないのですか」
「源氏の顔が見とうなってな」
 待て、信長は衆道の時期もあったが、森蘭丸は違うというじゃないか。心配なのは信長の時代両刀遣いが普通だったことだ。唯一の例外が秀吉で、男を宛がったら怒ったというくらいの女好きだったそうである。
「ど、どうしたんです?」
「この時代にひとりというのは儂でも堪える。源氏は楽しそうにしておるし、大したものだと思うてな」
「楽しくでもしていないと、気が滅入るばかりですから」
「なるほど。儂も見習うとしよう」
「諦めても希望をなくしてもいませんけどね。ともかく部屋で着替えて休んでてください。俺、ちょっと試したい料理があるので、後で一緒に食べましょう。多分夕食後になるかもしれませんけど」
「うむ。では楽しみに待つとするか」
 信長は出て行き、俺は厨房へ向かった。
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