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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 32 - |
な、何だ……あれ
家の屋根の上に、何と説明したらいいだろうか、とにかくボーっと光る狐みたいなのがいる。なるほど、尻尾が扇のように九本あるな。 結構デカい。 と、狐がクワっと唸ると、屋根からこっちに飛び掛かって来た! 一直線で飛んでくるところを、信長の槍が一突き、という瞬間、狐は空中で身を翻すと、ひらりと俺たちの脇に着地した。 慣性の法則など完全無視、バケモノか 彼我の距離は五メートルくらいだ。 目を爛々と金色に輝かせ、開いた口だけが異様に赤く、真っ白な鋭い牙が並んでいる。 恐っ! 噛まれたら死ぬな、絶対。足の爪もかなり長く、鋭そうだ。こりゃ普通の人間なら逃げるよな、よし、逃げよう! って訳にもいかないか。 真っ暗な路地だが、狐から発する光で結構明るい。唸る狐とそれを槍で牽制する信長がいる。その光は九尾の狐のオーラと信長のオーラがぶつかっているようにも見えた。実際は信長は光ってないんだけど。 「ど、どうしたらいい」 俺が言うとしずかが言った。 「……私に任せて」 しずかは呪を唱え、お札に指を複雑に動かし、そのお札を俺に渡して言った。 「……これを狐の額か胸に貼って。それができるのは光の君だけ」 な、なんですとぉ? 「つまり俺が、あの狐の傍まで近寄って、牙をむき出しているその顔にこれを貼れと?」 しずかにそう確認すると、力強く頷いてるし。 できるかーっ! とも言えないので、とりあえず一歩だけ前へ。 と、お札を見た狐はぽーんと飛んでふたたび屋根の上へ、そしてもう一度跳ねて向こう側に降りて行った。 「……追って」 ま、マジっすか! 仕方ないので路地をぐるっと回って向こう側まで走った。 そこに狐がいた。が、俺の姿を見るなりまた逃げようと向きを変える。 追っかけたってムリだし、反撃されたら俺死んじゃうんじゃね? 『……お札、貼って』 しずかの声がした。周りを見ても、いないよな。 『挟み撃ちにします。光はそこにいてください』 なんで伊周さまの声が? 『……乳帯符だから』 あ、そうかしずかの渡した乳帯符ってので声が聞けるってこういうことか。 しずかってなんでもアリだな。 道の向こうに人影が見えた。 それを見て狐はまたジャンプしようと、足をたわめる。 まずい、逃げられるぞ。 止まれ! そう強く念じると狐が止まった。 いや、止まったのは時間だが。 なので、俺はとことこ歩いて近寄ると、ペタっと護符を貼った。 簡単過ぎ。 時間が動き出し、狐の光が一瞬強まったかと思うと、ふっと消え、そこには女が倒れていた。 皆が走ってくる。 うーん、どうしよう? だってこの女、すっごい美人で、ナイスボディーで、爆乳で、おまけに裸だったから。 とりあえず狩衣を脱いで掛けておくか。 「狐はどうした!」 信長が一番に駆け寄ってきた。 「お札で消えました」 「この女は?」 「えっと、信長、ちょっと俺に協力してください」 何をとは言わなかった。 皆が来ると、俺は狐が消えたこと、この女が襲われたのかもしれないから、うちに連れて帰ると告げ、検非違使に帰るように言った。主の願いだということもあるだろう、信長も分かったなら帰れと脅したし。 で、枕部だけにると、再び信長が問いかけてきた。 「源氏、何があった」 「狐がお札で、この女になりました」 「本当なのですか、光」 「ええ、伊周さま。しかも、この下は裸です。ご覧になりますか?」 「……エロガッパ退散」 「じょ、冗談だって。なあ、しずか、あのお札でもう狐にはならないのか?」 「……違う、ただ気絶させただけ。またなる」 「変身できない結界とかって張れないか?」 「……できる。光の君の部屋なら」 「なんで俺の部屋限定?」 「……もう色々仕込んであるから」 あ、そうか。 俺の部屋に何か細工してるってことね。 怖いわ! |
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