印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 33 -
 ともあれ俺の部屋に運ぶことになった。で、なぜか俺が背負って行くことに。
 まあ、メンバー的に仕方ないか。
 背負うと、どこぞのツルペタと違って、背中に色々な弾力を感じる。
 いいものだ。
 それにしても見た目と違って相当軽い。
 女を俺の部屋に寝かせると、しずかは結界を張った。本当なら一晩がかりなのだそうだが、見ているうちに終わるって、どんだけの細工を俺の部屋にしていたんだ?
「……これは光の君を守るための結界」
 そうなんだ、ありがたい、のか?
 男は出ていろと言われ、あかねとしずかで着物を着せる。
 とりあえず出て待つ男達である。
 ほどなくして呼ばれたので部屋に入ると、あかねはそれではと戻って行った。
「……起こす」
 しずかがそう言うとすぐに女の目がゆっくり開いた。
 周りを見渡し、俺を見て、ぽっと赤くなる。
 なぜ?
 それを見て、しずかがジト目で俺を睨んでいるけど、それもなぜ?
「お前は誰です?」
 女は伊周さまの声にそっぽを向いた。
「誰だと聞いておる」
 今度は信長の低く押さえた声、それもツンとなって無視された。
「ねえ、さっき狐の姿から変わったよね、それが正体?」
 俺が聞くと、女は俺を見て微笑むと、こくりと頷いた。
 あれ?
 その後、他の誰が聞いてもダメだが俺にだけ反応するので、俺に任せるからと伊周さまと信長は部屋を出て行くという。
「後で話を聞かせてください。私は壮呂と碁を打って待っていますので」
 あ、まだ打つんだ、途中だったからな。
 ということで俺としずかが残った。
「お前、名前は?」
 俺がそう聞くと、初めて声を出した。
「玉藻と申します、ご主人さま」
 九尾の狐で玉藻って、もしかして玉藻の前か? 確か、百五十年後くらいに出てくる妖怪だけど、妖怪にしたらそのくらい誤差の範囲かもしれない。にしてもご主人様って?
「玉藻、か。ご主人様ってなんだ?」
「あたしを調伏した人がご主人さまって決めてたから。あなたがご主人さま」
 色っぽいというか、艶っぽい声だった。何だ、自分のことをあたしって言うのか。妾とかわっちを期待したのに。
「……調伏したのは私」
「違う、お札を貼ったのはご主人さま。お前じゃない」
 冷たい声の玉藻である。
 態度が極端に違うが、他の男には声も出さなかったのだから、それよりはマシなのかもしれない。
「じゃあ、もう悪さはしないな。ご主人様というなら、俺に誓えるか」
 そう言うと玉藻は、また艶っぽい声で応えた。
「もちろんですとも。というか脅かした程度のことで、傷つけたり悪いことなんてしていませんけど。これからはご主人さまのために尽くすことを誓います。あたしの妖力がきっと助けになると思いますから」
 潤んだ目で俺を見つめている。
 玉藻は仲間になった。
 玉藻は嬉しそうに馬車に走って……ということはなかったが。
「まあ、今日のところは、ここに置いとくしかないか」
「……なら、私もここにいる」
 その方が色々な方面に安全かもな。伊周さまに話をしてくると言って、後はしずかに任せ、伊周さまのところへ向かった。
 伊周さまと信長は、あの女、玉藻のことを考える風でもなく、囲碁に興じていた。
「む、そう来たか、一番打って欲しくないところばかり打ってきよる」
「急所を攻めるのは当然ですよ。そうならないように、先手で打ち回さなくてはいけませんね」
 手も足も出ないというところかな。
 そんなことはともかく。
「伊周さま、あの女の話なのですが」
「聞きましょう」
「名前を玉藻と言っています。悪事を働いたことはないそうで、俺を主人と決め、これからは俺に尽くすそうです」
「分かりました。やっぱりですね」
「え?」
「光には何かそういう力があるのでしょう。壮呂にしても、玉藻にしてもそうですし、何より、あのゆかりやしずかが懐いているのが私には信じられませんし」
「そう、なんですか?」
「儂を妖怪変化と一緒にしないでもらいたい。にしても玉藻の前か、聞いたことがある」
 信長の言葉に、流石は未来人と伊周さまは感心されているようだ。
 ゆかりたちは最初からくっついて来てばかりいるので、懐くのが信じられないという方が不思議だった。そういえば、ゆかりはさや以外にはひとりしか友達がいないと言っていたのはしずかのことなのだろう。
「私や壮呂には光ほど親し気ではないですよ? 嫌われてはいないと思いますけど。あの子たちが、定子とさや以外であれほど懐いているのには心底驚いたものです」
「まさか、ゆかりとかって妖怪変化の類いじゃないですよね」
「違います。両親も知っていますから、ちゃんとした家柄の娘です」
「それで、玉藻は結界のある俺の部屋じゃないといけないんで、今夜はとりあえず置いておこうと思うのですが」
「そうですね。それしかないでしょう。でも、ふたりっきりだと危なくないですか? 色んな意味で」
「しずかが見張るって言ってましたけど」
「流石はしずかですね」
 伊周さまたちは打ち終わったら休むので、何かあったら知らせろということだった。
 部屋に戻ると、しずかと猫耳、いや狐耳の美少女がいて、玉藻はいなくなっていた。
「……これが玉藻」
 年上の妖艶な美女が、年下のロリロリ美少女になっていた。
「どうして、こうなった!?
「……こういうのが光の君は大好きだと教えた」
「お前が好きなんじゃないのか?」
「……バレた」
「まあ、どっちの玉藻も俺は好きだけどな」
 そう言うと玉藻は嬉しそうにして、近寄ってきた。
「たまももお兄ちゃんが大好き」
 その言葉に、俺はしずかを振り返って、睨みながら聞いた。
「お兄ちゃんって、何?」
「……妹の方が喜ぶって教えた」
 この時代、妹と兄、妹兄(妹背)というと、妻と夫、感じとしてはハニーとダーリンってことなのだが、ここは現代語としての意味で書いている。
「それもお前の趣味か?」
「……バレた」
 しずかは末っ子だと思うから、リアリティーのない妹に萌えるのかもしれない。
「お兄ちゃん、だーい好き」
 そう言って、玉藻はぎゅっと抱きついてきた。む、胸がぽよんって。
 しずかを睨む。
「……胸が大きい方が絶対に喜ぶと教えた」
 無言で睨み続けた。
「……バレた」
「で、結界があるのに、なんで変化できてるんだ?」
「……結界は本性へ戻ることを禁じているだけ」
 なるほど、いわゆるご都合主義的結界ってやつか。
「玉藻、よく聞け。多分、明日になるともっと凶悪な女が来て、お前にあれこれさせようとするだろう。俺が言わない限り、他の姿になってはダメだ。いいな」
「うん。お兄ちゃんの言うとおりにする」
 じゃあ、寝るかということにしたが、しずかがベッドで寝たいと主張した。ならばと玉藻もベッドに寝たいと言い出す。なんで俺が低い畳なんだと言うと、そんなのとんでもないと二人で言う。
「お兄ちゃんも一緒に寝るの!」
「……でも変なことしちゃダメなんだからね」
「しずか、それ何?」
「……摘照冷(つんでれ)」
「あ、そ」
 でも、そりゃツンデレじゃないと思うぞ。
 ということで、俺が真ん中、左右に玉藻としずかが寝た。
 じゃ、おやすみ。
 大人の玉藻とあかねだとどきどきで眠れなかっただろうが、このふたりだったからすぐに眠ってしまった。
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