印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
携帯・スマホからもご覧いただけます⇒

第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




  (ルビ表示が正しくない場合)


横 縦     並 大 特大     G M
- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 35 -
 屋敷に着くとあることを思い立ち、あかねに束帯に着替えさせてもらった。
「ちょっと職の関係で行かなくてはならない。連れていけないところだから、良い子でここにいろ。それから諾は寝せてやれ」
 主にゆかりに言った。
「わかっら、まっれる」
 口いっぱいに唐菓子を頬張ってゆかりが言った。しずか後は頼む、と言って、そのまま外に出た。
 俺の部屋にゆかりとしずかと玉藻の三人を残すのは暴挙だが、いつも邪魔されるので仕方がない。何もないことを祈るばかりだ。
 道を急ぎ、追っ手がいないことを確かめながら門をくぐって内裏に直行した。
 ここでも追っ手を確認することは怠らない。
 わざわざ着替えたのは、仕事というのを強調するためだ。そのまま出かけたら、そのまま付いてきそうだからな。
 どこに行こうとしているかというと、さやのところである。
 大抵はいないのだが、珍しく見つけることができた。
「さやさん」
 と呼ぶと、俺を見つけて手を振ってくれた。
「おひとりですか? まあ、珍しい」
「さっきまで一緒だったんですが、うちに置いてきました。あの、ちょっといいですか?」
「はい。もちろんです」
 にっこり微笑んでくれる。やっぱり、癒やされるなぁ。
「あの、ご飯のことなんですが」
「ご飯、とはなんでしょう」
「米を食べるのって、強飯以外に何かありませんか」
「うるち米というのを粥にすることもありますよ。固粥は水がなくなって柔らかいおこわのようですし、柔らかい水粥とか栗や小豆を入れた粥もあります」
「うちはいっつも強飯だったんですが、そういうのも食べられているんですね」
「そうです。めのこはそういうのが好きですよ。もち米は上流階級の食べ物ですから」
「なるほど」
 久しぶり、というか、初めてこの時代に来たとき以来くらいのツーショットだ、もっと話をしたいな。
「あの、さやさんって結婚したりしてますか?」
「えっと、以前ちょっと。でも、今はそういう人はいませんから、ここで女御さまに仕えているんです。あの、光源氏さま、私にさやさんというの止めてもらっていいですか。さやとお呼びください」
「わかりました。では俺のことも、ただ光と呼んでください」
 おお、前進したぞ!
 いい感じじゃないか。やっぱりおじゃま虫がいないのはいいな。このままもっといい感じになって、仲良くなって、ゆくゆくは、とか。
「ひ、光は、誰か好きな人はいるんですか? ゆかりとか」
「ゆかりは勝手に来てるだけですから。俺が好きなのはさやだけです」
「え?」
「あ……」
 いかん、妄想が暴走してしまった。
 でも、さやもまんざらではないのか、ちょっと頬を赤らめているようだ。白粉仮面の平安美人ではこうはいかない。赤くなろうが、怒ろうが、顔色どころか表情だって変わらないのだから。
 ちょっと気まずくなってしまったが、ここで帰ってはいけない。なおさら気まずくなって、次に会いにくくなるからな。 どうせダメなら押してみる。
「ほ、本当なんです。さやが好きって、最初に会ったときから」
「わ、私も好きですよ、光が美人だって言ってくれたから」
 お、いいかも。
 それからちょっと話をして、また明日、食事に来るのを待ってますと言って別れた。
 るんるんで歩いていたが、一計を案じ、難しい顔をして部屋に戻る。
 玉藻はあいかわらず俺以外には冷たい声を出していたが、それでも言うことは聞くようで、ゆかりたちのいいおもちゃになっていたらしく、俺が帰ると「お兄ちゃん、寂しかったよぉ」と目を潤ませて、胸に飛び込んできた。
「コラーッ! 何やってんだ、そこのキツネーッ!」
「……ほら、ゆかりも飛び込んで」
 というところにあかねが食事だと言ってきた。
 おかげで、どこで何をしてきたかとか聞かれずに済んだ。
 朝食には伊周さまと信長も戻ってきていた。どうやら、警備のために色々調べていたらしい。どこが危ないとか、どうすべきだなどと信長が伊周さまに言っている。
「そうそう、光。職の建物もあらかたできているので、もう少ししたら入れるだろうと思いますよ」
 流石は道隆さまと伊周さまの力だな。めちゃくちゃ早いじゃないか。
「それは良かったです。伊周さま」
「それと、明日の食事にはもう二人くらい増えると思いますが、大丈夫ですか」
「はい。予想通りです」
 数えたら十人だったので、十二人くらいに増えるかもと予想していただけなのだが、伊周さまは感心されたようだ。
「なるほど、未来人は大したものです」
 まあ、訂正しないでおこう。
 玉藻もいるから十三人だけど、とりあえず十四人としておくか。
 食後、仕込み前に、ちょっと食休みしておこうと部屋に戻る。
「お兄ちゃーん、ゆかりがいじめるよぅ」
 玉藻が飛びついてきた。
 見るとしずかがいなくなっていて、玉藻とゆかりだけである。
「あれ? しずかは?」
「結界がどうとか言って、うちに帰ったわよ」
「ゆかり、お前は行かなくていいのか?」
「なんでウチがしずかのとこ行かなきゃなんないの? それよりさ、さっき、どこで何して来たの?」
「ちょっと調べ事をな。米の調理について、聞いてきた」
「ふ~ん」
 疑わしそうなゆかり。話題を変えなければ。
「な、これから料理の仕込みとかするんだけど、手伝ってくれるか」
「うん、お兄ちゃん!」
「りょ、料理なんてしたくないんだけど、あんたのためならやってあげるわよ」
 いや、ゆかり、それ、言い方はツンデレっぽいけど、セリフがツンデレになってないからな。
第1巻:page 36 < 次  枕部之印  前 > 第1巻:page 34

【お知らせ】
広告のお申し込み・当ページプログラム販売など承ります。委細メールにて。
(著作表示より送信)
 
▽ 基礎知識 ▽

平安用語の基礎知識
 
関連用語の基礎知識