印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 39 -
 翌朝、ふたりでベッドに寝ていた。
 後朝(きぬぎぬ)というのは事の次の朝のことだが、英語でもアフターモーニングというのが面白い。
 目を覚ますと、ゆかりは俺の腕の中でまだ寝ている。
 と、俺が目を覚ましたせいか、ゆかりも目を開けた。
「おはよ」
「ああ、おはよう。よく眠れたみたいだな」
「おかげさまでね。ウチ、自分ちじゃないと眠れないって思ってたんだけど、ちゃんと眠れるもんね」
「まあ、昨日は風呂で疲れ切ったからな」
「そういうことにしといてあげるわ」
「さて、料理の仕込みやらあるから、俺は起きないと」
「ウチも手伝ってあげる」
 ちょっとは機嫌が直っているらしい。
 昨夜、ゆかりは「おのこというものは、めのこの、ち、乳を揉むのだろう?」などと言い出したのである。
「ああ、乳があればな、ツルッペタだと背中の方が揉みがいがあるぞ」
 俺がそう言った途端に暴れ出したのだ。
「誰が蔓塀垂(つるぺた)だぁ!」
 その拍子にやつの踵が俺の脳天にクリティカルヒット!
 そこから、さっきの朝まで俺は記憶というか、意識がなかった。だから、何があったのか俺にも分からなかったりする。
 鈍く痛む頭をひと撫ですると、俺は厨房に向かった。
 とりあえず湯を沸かす。
 まずは松前漬けのチェックだ。スルメは柔らかくなり、粘りも出て食ってみると結構美味い。
 大豆を煮て、ごりごりと石臼で擦って豆乳を濾して、にがりで固めて箱に入れ重しをする。人数がかなりになるし、湯葉もできたら試したいので、いつもの何倍も作らないといけないな。
 小豆は何度か茹でこぼして、それから本格的に煮て、最後に塩を加えあんこにする。近代まで小豆は塩味だったのだ。
 日本の味付けの基本は、砂糖・酒・醤油だろう。
 醤油は味噌とさほど違わない作り方だからすぐにでも作れるが、問題は砂糖だ。サトウキビは日本に入ってはいるが、現代でも作られているのは沖縄・鹿児島などの暖かい地方のみだから、京で育ててもダメなのだ。
 名状しがたい醤油のようなものは、発酵が進んで泡立っていた。それを布に入れて、絞って、更に目の詰んだ布でゆっくり濾す。濾過だな。どうしても多少は濁るが、舐めてみると醤油っぽい。うま味が足りないようにも思うが、ちゃんと作っていないのだから仕方ないだろう。
 朝食準備が始まりそうなので、片付けをして部屋に戻った。
 ゆかり、ありがとな、助かったよって言ったら、何かデレてるし。
 後の料理は何にしようか。
 糖尿病に悪いのは炭水化物の摂取らしい。
 現代でたまたま見たのは、とにかく炭水化物を避けるというやり方で、その他は割と普通でいいというものだった。賛否両論あったみたいだけどな。
 もうひとつの賛否両論に朝食抜きというのがあるが、統計的には糖尿病患者のアンケートで五年以上朝食抜きの人が八割近かったというのがある。食事習慣を変えるには、仕事時間から変えないといけないので、手軽になにか食べられるものをそのうち考えよう。
 とりあえず料理をまとめてみる。
 いなり寿司は炭水化物だが、既に決定済みなのでこれは作る。
 松前漬けは、イカのタウリンと昆布のネバネバがいい。あのネバネバは、八割がアルギン酸カリウム、残り二割がフコイダンやラミナランなどの多糖体だという。フコイダンには体調改善効果、生活習慣病に効果があるらしい。
 モッツァレラチーズにはタンパク質やカルシウムが豊富だ。
 雉の胸肉はスライスして、にんにくと甘葛、醤油で下味を付けておき、石を焼いておいて、そこで焼きながら萵苣で胡瓜を千切りにして水にさらしたのと一緒に巻いて食す。
 後は、残りの雉と根菜類を炊き合わせてやるか。
 よし、朝食後は石を拾いに行こう。
「なあ、ゆかり。こんくらいの綺麗な石ってあるかな」
 こんくらいというのを両手で輪っかを作って示した。
「ちょっと歩けば河原があるから、いくらでもあると思うけど?」
「朝食の後、一緒に探しに行ってくれないか?」
「い、いいけど?」
 朝食後、表に出ると、ちょうどしずかと玉藻がやってきていた。
「お兄ちゃーん」
「……ゆうべはお楽しみでしたね、ふっふっふっ」
 玉藻がくっついてきて、しずかは訳の分からないことを言った。
「俺はただ気絶してただけだけどな」
「な、何言ってるのよ、しずかは」
 いや、何にもなかったんだが、そう言うと疑われないか?
「これから、河原に石を拾いに行くんだけど、一緒に行かないか?」
 ということで、近くの河原へ。
 平安京といっても、最初は自然の中に作ったもので、人が住む場所というのは大抵、川の傍と決まっている。水は農耕やら炊事洗濯に必須だからだが、逆に洪水との戦いにもなるのだけれど。
 平安京には川が多い。右京には桂川が流れ、帝が船遊びを興じられることもある。左京の東には賀茂川・鴨川が流れている。高野川との合流までを賀茂川、それ以降を鴨川と呼ぶ。現代の話だけどな。近いので東の鴨川に行ってみることにした。
 鴨川は暴れん坊川で、本格的な河川改修が終わったのは、なんと戦後になってからだ。だから、今の河原は自然のままで、大小さまざまな石がころがっていた。
 まだ水は冷たいが、大はしゃぎで遊び始める三人。なんだ、玉藻もかなり馴染んでいるじゃないか。
「玉藻、しずかと仲良くなったのか?」
「しずかの言うこと聞くって、晴明さまに約束したから。今度いたずらしたら滅するって言われたよ」
 いや、明るく滅するって言われても。
「お兄ちゃんの言うことを良く聞いて、お兄ちゃんの仕事を手伝えだってさ」
 え、まだ構想だけで俺の頭の中にしかないのに、なんで晴明さまは知ってるんだ?
「……わたしが教えた」
「ちょ、待て。お前にだって何にも話してないだろ?」
「……触れると分かる」
「エスパーか!?
「……絵透破(えすぱ)じゃない、陰陽師」
「えっと、もしかして、俺が誰のことを好きだとかも知ってる?」
「……もちのろん」
「言うなよ」
「…………」
「返事しろよ!」
「よし、ウチが許す。しずか、言ぃっておしまい!」
「けしかけるな、ゆかり!」
 まあ、しずかは言わなかったので良かったのだが。
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