印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第1巻:page 43 -
 こっちに来て早ひと月あまり、ようやく枕部の建物ができた。かなり早いと思うが、上の方からの指示だから工匠(たくみ)たちも頑張ってくれたと思う。
 機能満載のつもりだ。
 何か、信長も忙しそうにしてるけど、何やってんだろ。あんまり会えなくなってたからな、このところ。
 今日はまず枕部本部(ゆかり命名)へ行く。
 戸が二重になっていて、外が障子、つまり板張りなのは他と同じだが、内側は格子に紙を貼った明かり障子を完備。蔀部分には外側に荒く編んだ布、つまりは網戸のようにしてある。虫が多いからな。
 他と大きく違うのは、これでもかという立派な厨房設備を作ったことだろう。
 現代と違うのはコンロがなくて竈だというくらいだが、火を焚く部分をレバーで上下できるようになっている。囲炉裏の自在鉤と逆の発想だが、飛鳥は言うと作ってくれるからかなり頼もしい。
 オーブンも作った。薪を焚くやつで、ピザを焼く窯のようなものだ。
 調理や配膳用にカウンターも大きなものにしてあるし、大きな作業台もある。そのうち麺打ちとかしたいから。
 包丁や調理器具も飛鳥に頼んで色々作ってもらった。プラスチックがなくて木だということ以外は、現代と遜色ないだろう。泡立て器が一番大変だったらしい。メレンゲとかホイップクリームが作れるから、また料理の幅が広がるな。
 部屋にはテーブルと椅子。椅子は中に動物の毛を入れ、なめし側で覆ったレザー仕様だ。
 寝泊まりできるように、二階があって、ベッドと布団が二組置かれている。綿、コットンは輸入がほとんどで高級品だから真綿だけど。現代だと逆だな、真綿って絹糸で作ったものだから。どれも時代を先取りしたものばかりだから、見に来た人が非常に驚いて帰る。敷き布団と掛け布団だけでも見たことがないんだから。
 こういう職にある私室を御曹司(みぞうし)というのだけれど、俺も御曹司ということになるかもしれない。
 出来映えに満足していると、蹄の音が聞こえ、俺を呼ぶ声がした。
 出てみると、信長である。
「馬なんてどうしたんです?」
「主上がご下賜くださった名馬だ。見ろこの毛艶、まるで赤兎馬のようだろう」
 赤兎馬は三国志に出てくる関羽の馬である。馬が赤いのはいいとして、顔当てや鞍まで赤いのはどうだろう。何か、馬の額から一本の角みたいな飾りが出ててユニコーンみたいだ。
「す、凄いですね」
「うむ、至遠(じおん)は並の馬の三倍は走るぞ」
 名前まで付けたんだ。
「素晴らしい。で、そちらの三人は?」
「ああ、こやつらは宮城内を探して、見つけた三人だ。伊周殿から道隆殿に言ってもらって、引き抜いてきた」
 三人を見ると、なるほど屈強そうな若者だ。
 信長に促され、自己紹介を始めた。
「猴(コウ)でん。俊敏な動きが得意でん」
 猴は、背が低く、引き締まった体で、顔も小さめだった。
「狗(ク)だす。走るのが速いだす」
 狗は、背が高く、これも引き締まっていて、面長である。
「禽(キン)どす。飛び道具が得意どす」
 禽は、中背だが、かなり細く、顔かたちは普通。
 てか、お前らむりやりキャラ作ってるだろ。
「桃太郎ですか?」
「そうだ。儂が失敗したのはサルとイヌはいたが、トリがいなかったからだとお主に言われたからな」
 これは俺がうっかり言ったことによる。信長にはサルとイヌはいるけど、キジがいませんね、というと不思議そうにしているから、秀吉のサルと犬千代ですよ、桃太郎の、と言うと、桃太郎は知っているが、そんな動物は出て来ないと言ったのだ。
 で、気がついた。
 その三匹を家来にする話は明治以降に作られたんだった。信長はそれを覚えていて三人に名付けたのだろうが、キジじゃなくてトリにしちゃった。鬼門である丑寅(艮)の反対側、戌申酉を家来にしてるともいわれているので、トリでも正解なのだけど。ちなみに、鬼が牛のような角があって、虎のパンツを履いているのは、丑寅だからだとか。
「源氏、お主も馬に乗れるようにしないといかんぞ」
「はい。伊周さまにも、言われてます」
「うむ。伊周殿はかなりの乗り手だ。碁といい馬といい、なんでもできる御仁だな」
「そうですね。勝てるところがいっこも見つかりませんよ」
「ははは、仕方がないだろう。源氏とは生まれも育ちも違うのだから」
「分かってますよ」
「腐るな、腐るな。どれ、京をもう少し回って来よう。者ども付いてまいれ」
「親方さま、また走るんどすか?」
 などと言いつつ付いていく三人。親方さまって呼ばせてるんだ。
 本当ならお館さまって呼ばせてるのかもしれないけど、一応の配慮としておこう。
「いたいた、おーい、準備が出来たわよー」
 もうちょっと近づいてから言えよ、ゆかり。みんな振り向くじゃないか。いわば官庁街のど真ん中なのだ、似つかわしくない態度に見えてしまうことだろう。
「迎えに来たわよ」
「おう、早かったな。よし、行くか」
「うん」
 ゆかりと連れだって、里に出た。
 三条と朱雀大路がぶつかるあたり、一等地に良い空き家があったので、そこを借り受け、店を出したのだ。
 お茶は団茶と緑茶と紅茶、団子と善哉、ういろう各種といなり寿司がある。
 市中の警備、情報収集、資金集めなどの目的で認めてもらったもので、塀を取っ払って、テーブルとベンチを置いてある。
 まだ開店はしていないが、遠巻きに覗いている人がかなりいるな。
 貨幣はあってそれなりに流通しているが、市や振り売りだけで店がないので使い道が限られ、流通量は少ない。
 この一号店を皮切りに、いくつか店を出すつもりだし、食べ物以外の店もそのうちに出したいと考えている。そのためにも、絶対に成功させたいものだ。
 貨幣の流通量も増やせば、朝廷も潤うと言うと、急ピッチで作り始めたし。
 現金なものだ。
 店には中級貴族の子女を雇った。なぜ中級かというと、上級だとやれなさそうだし、店が中級貴族が多いあたりだということもあったからだ。枕部の一員になったのと同じ待遇なのだから、意外に中級貴族でも簡単に集まって、面接までして決めた。表は男性、料理は女性としているのは、白粉禁止にしたから女性が人前に顔を見せるのを嫌がったからだ。もちろん料理ができる女性を雇ったのは言うまでもない。
 通貨が一種類しかないから、勘定も簡単で、間違いが起きようもなかった。言い含めてあるのは、たとえ何人であっても、必ず代金をもらうことである。俺の味見だけは除き、他の誰にも味見させてはならないとした。そうしないと大変だからな。いなり寿司は当然として、団子や善哉を狙っているやつもいるのだから。
 厨房を最終チェックしておく。
 準備はいいみたいだ。
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