印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第2巻:page30 -
 道隆さまの私邸は何度も行っているから、それほど緊張しなくなっていた。
 行くと、こちらへと奥に通された。
 そこには道隆さまと、人の良さそうな細面の老人がいた。
「来たか、そこへ座れ」
 怒っているのかそうでないのか、多分素人には判断できないだろう。俺にすら分からないのだから。
「枕部に新たな仕事をしてもらうことになった」
 そう言って道隆さまは隣に座っている老人に目配せされた。
「枕部佐さま、お初にお目にかかります。安倍晴明(あべのはるあきら)です。しずかがお世話になっています」
 丁寧な口調だった。
 安倍晴明ってもっと怖そうな人なのかと思っていたが、そうでもなさそうだ。
「佐さま、おにというものをご存じかな?」
 いや、晴明さま、すけさまって。
「何となくは」
「多分、私の知らぬ未来の鬼を考えておられるのでしょうが、本当の鬼は違うのです」
「どんなものなのですか?」
「鬼とはこの世を犯す異界の存在、異界からの来訪者なのです」
「はあ……」
「そして、ヤツらはこの世を、人も動物も全部消し去ろうとしています」
「え、全部ですか?」
「そうです」
 ちょっと鬼のイメージとは違うのだが、晴明さまが摂政道隆さまの前で嘘を言うとも思えない。
「お前たちには、その鬼を退治してもらう」
 道隆さまが思いっきり低い声で言われた。
「えっ、俺たちで、ですか!?
 桃太郎の芝居を書いていたけど、鬼って実在してるのか!?
 しかも鬼退治って。
「そうだ」
 道隆さまが断言されると、晴明さまが続いて説明された。
「ただし、普通の人間では鬼に触れることすらできません。退治はおろか、戦うこともできないのです」
「では、どうやって戦えと」
 俺は、晴明さまを見て、次に道隆さまを見た。押し黙ったままだった。
 晴明さまが言われた。
「鬼をたおすには、鬼もどきを使います」
「鬼もどき、ですか」
「長年の研究の成果をお見せいたしましょう。しずか」
「……はい、とうさま」
 しずかはお札を取り出し、しゅを唱えた。
 お札が光り、それを中心に、色が反転した世界が広がって行く。赤は青へ、青は赤へ、白は黒へ。やがて色がなくなり、真っ暗になった。
 気がつくと明かりがいくつも灯った場所にいた。気を失ったのか、俺は床に倒れていた。耳に妙な音、バズ音のようなものが鳴り続けている。もちろん電気的なものではないだろう。反響のせいか、無音が故の耳鳴りに似た何かだろうか。暗い空間、広いことだけしか分からなかった。
 見回すと、ゆかりと諾もちゃんといる。
「こ、ここは?」
 俺の声に、しずかが応えた。
「……みやこ地下の秘密の空間、音流府ねるふ
「こんなところが地下にあるなんて……知らなかった」
「……秘密だから」
 ま、そうなんだろうけどさ。
「こちらです」
 晴明さまに促され、全員が後に続いた。
 
「これが鬼もどき、『衛姥えいば』です」
 晴明さまが指し示した先にあったのは、人に似た何かだった。
 鬼のイメージより細いと思うが、青や赤い体はいわゆる鬼の色で、その体はかなり大きい。鬼の歴史というものでは、初期の鬼は全て女性の形だそうで、だから『姥』なのだろう。
 山姥やまんばの類いなのかもしれない。
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