印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第2巻:page44 -
 家では伊周さまが心配して待っていらした。
「大丈夫でしたか? 光」
「大丈夫って、何がでしょう」
「皇太后さまのところに連れて行かれたそうではありませんか。私はもう心配で心配で」
「色々話しましたけど、怖い人じゃなかったですよ? 何を心配されたのですか?」
「いや、まあそれならいいのですが」
「もしかして、伊周さまって詮子さまが苦手とか?」
「え、そ、そんなことはありませんよ」
「ちょっと大事な話なので、お部屋によろしいですか」
「ええ、光が大事というのですから、聞かないわけにはいきませんね」
 伊周さまの部屋に行った。
「で、何でしょう、大事な話とは」
「はい。これは伊周さまの命運に関しますから、詳しくは言えないのですが、詮子さまと仲良くしてください」
「え? 別に仲が悪いということはないと思うのですが」
「そうではなくて、気に入られなくてはなりません。はっきり言えば、道長より伊周がいいと仰るくらいまで」
 伊周さまははっとされ、真剣な目つきに変わった。言っている意味を理解されたのだろう。次の権力争いは道長との間に起こり、それに詮子さまが関わっているのだと。
「でも、どうしたらいいのでしょう。いきなり貢ぎ物というのも嫌らしい感じですし」
「そうですね……俺にひとつ考えがあります」
「どんなことでしょう?」
唐花草からはなそうというのはご存じですか?」
「ええ、京近くでは見かけませんが、遠乗りに行った折などに見かけますね」
「その花を、できるだけ多い方がいいですが、それを干して使いたいことがあります」
「なるほど、光のことですから、料理ですね」
「まあそうです」
「昔から煎じて飲まれていますが、別の使い方ということなのでしょう?」
「多分、詮子さまもお気に入りになると思います。ですから、枕部としてではなく、伊周さまがお作りになられたことにされるといいかと。荘園で作るのもいいかもしれません」
「分かりました、光の言うとおりにしましょう。他に何が要りようですか?」
「大きないくつかの樽と、大麦のもみのままのものがまずは必要です。他はその後ということで」
「すぐに用意させましょう。光が作るのだから、それって美味しいのでしょ?」
「実は、俺の時代と同じものは作れません。似たものになりますから、作ってみてからのお楽しみということろです。あと、酒造りが本職の人に手伝ってもらいたいのですが」
「酒ですか。分かりました、手配しておきましょう」
 さて、何を作ろうとしているか、だ。
 大麦は、本当は二条大麦というのが欲しいのだが、それは明治になるまで入ってこない。
 唐花草は日本に自生している種類で、本当はベルギーあたりの近種でセイヨウカラハナクサというのが欲しいのだが、これも明治以降にならないと入らない。
 このセイヨウカラハナクサの花を『ホップ』という。
 大麦とホップといえば、ビールである。
 本来は麦芽を焙燥して焦がし、ビールの色になるのだが、ここでは麦芽本来の力を残し糖化酵素が働くようにするつもりだ。つまりは水飴、麦芽糖作りである。唐花草も煮出して、麦芽糖と合わせ、何らかの方法で発酵させ、濾過して瓶に詰め更に発酵させる。問題はその発酵で、ビール酵母などないから日本酒造りを真似るしかない。酵母というものが発見されるのは19世紀なのだ。
 唐花草はホップの仲間だが、苦みが少ない。しかし、初めて飲むビールなら、本格的な苦みより軽いものがいいかもしれない。実際、現代のビールも苦みの少ないものが好まれているって聞いたことがあるし。冷えたビールというのは望めないが、冷蔵庫が普及するのは戦後のことで、それまでのビールの歴史では冷やさないビールしか飲まれて来なかったのだから問題ないだろう。ただ、ちょっとは冷たくする工夫はするつもりだ。
 麦芽の糖化酵素は、玄米のそれより強い。水飴は玄米を発芽させたもの(米もやし)から作られていて、麦芽(麦もやし)が使われるようになるのは江戸時代以降だという。だったら玄米から作ってもいいと思われるかもしれない。
 しかし、それではビールとは呼べない。
 唐花草味の日本酒でしかないじゃないか。
 麦とホップと水、どうせならそういうものにしたいだ。
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