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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第2巻:page57 - |
小さくなった鬼が息を吹き返したようだ。
綺麗なエメラルドグリーンのタマネギという感じの体になっている。 丸い目があって、じっとこちらを見ている。 まさか? 仲間になりたいとかじゃないだろうな? 「お前、仲間に……」 俺がそう言いかけた時だった。 飛鳥の鬼切が小さな鬼を容赦なく真っ二つにしていた。 すぱっ。 『ふぅ、やったのぢゃ』 あー、お前、スラリンになんてことをー! 『……終わった』 『光、あんたに後で話があるから』 一難去ってまた一難というやつか。 「やったわね、あんたたち」 詮子さまだ。 どこにいたんだ? この人。 「最終訓練、合格よ」 ……何……だと? 「なんや、訓練やったんか」 瑠璃は呆れている。 「訓練って……結構、家とか壊れてますけど」 諾の言うとおりだ。 3軒は潰れたな。 鬼が2軒飲み込んで、衛姥、っていうかゆかりの岩で1軒逝ったんだけど。もちろん最初に取り壊していた家はノーカウントだ。 『ちょっと待って! たかが訓練で裸を光に見られたわけ いや、家とかの方が大きい問題だと思うんだ、たかが訓練だというなら。 『……やっぱり。変だと思ってた』 「そ、そうなのか?」 言ってくれよ、そういうことは。 『……玉藻は仕掛人』 「えへ、バレてるし」 「マジか、玉藻!」 「うん、お兄ちゃん。晴明さまに言われて、わざと実体化させたの。ごめんなさい」 「じゃ、あの鬼は?」 「あれは……」 「あれは、硬粘亀です」 玉藻の言葉を遮ったのは、他ならぬ晴明さまだった。 硬粘亀ってやな名前だな。 「この前、玉藻と調伏したものですが、お聞きになっていませんか?」 「いえ、全然。妖怪退治に行くとかいうのは聞きましたが、それですか?」 「ええ、捕まえてきました。さっき小さくなったのが正体です。それをちょっと細工しましてね、衛姥の技術で鬼に仕立て上げてみたんです」 「そんな人騒がせな。第一、どうするんです? 3軒くらい家が潰れちゃってますけど」 「大丈夫、空家ですから」 そういう問題か? 「ヒカル、あんたがちゃんと指示できるか見るには、教えないでやらせて見るしかないじゃない。ちゃんと羞恥心を刺激したのはいいけど、何で岩を持ち出したの?」 詮子さまもグルか。 「あれは、家の木とかは飲み込まれているのに、地面は削られてなかったので、岩なら飲み込まれないかなと思ったんです」 「なるほどね、ちゃんと見てるじゃない」 「はあ」 「みんな撤収よ!」 詮子さまに言われて、衛姥たちが帰って行く。 「お兄ちゃん、あれ見て」 玉藻が指さす方を見ると、真っ二つになっていた硬粘亀がもぞもぞ動いている。 ふたつが近づいて、ぽょん、とくっついた。 「紹介するね、硬粘亀の羅螺よ、甲羅の羅と法螺貝の螺で羅螺」 エメラルドグリーンの体で羅螺って言われたら、どうしてもあのモビルアーマーを思い出すな。あれって、宇宙用だと思うんだけど、何であんなにデカいエアインテークがあるんだ? それはさておき。 「おま、名前まで付けたのか」 「だって飼ってるんだもん」 ペットなの? まあ、玉藻は九尾の狐だから、ペットだろうと、たとえ食べたとしても不思議じゃないけど。羅螺はぽょん、ぽょんと跳ねながら近づき玉藻に飛び付いた。 「羅螺、この人が私のご主人さまだから、お前のご主人さまでもあるの。言うこと聞かないとダメだからね」 「らーらー」 あ、そういうことか。 あの、携帯モンスターというかポケット怪物というか、あれって自分の名前を喋るよな。変だと思ってたんだが、今気がついた。名前だから喋るんじゃなくて、そういう鳴き声だから、その名前になったってことだ。ワンワンと鳴くからわんわん、ニャァニャァ鳴くからにゃんにゃんとか。ラーラー鳴くから、羅螺ってことだな。玉藻、案外字を知ってるんだな、そっちの方が驚きだ。 それにしても、羅螺の鳴き声はどことなくしずかに似ているな。 |
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