印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第2巻:page59 -
 こうじというかもろみというのか、そういう匂いのする中を歩いて、座れる場所まで移動した。
「お茶というのはないので、これでもいかがですか。仕事じゃなく趣味で作ったものですが」
 常さんがそう言って出してくれたのは甘酒だった。
 酒粕さけかすから作ったものではなく、麹から作った本格派だった。
 美味い!
「美味いですね、俺、甘酒は大好きなんですよ。これって茶店、あ、亀屋って名前にしたんですけど、そこで出せませんかね?」
「そうですな……別当と相談してみましょう。仕事で作るとなると、それなりに色々ありますから」
「あ、ムリはしないでください。これからムリを言うかもしれないし」
「いやいや、大丈夫ですから」
「それで、水飴ってご存じですか?」
「もちろん知ってますが、それと酒に何の関係が?」
「水飴作りと似たこともするんです。酒は麹で甘みを出しますよね、この甘酒もそうですが。これから作ろうというのは、水飴と同じようにして甘みを出させて、それを酒にするんです」
「ほう、なるほど」
「ちょっと作り方を説明しますね」
 俺はビール造りについて常さんに一通り、簡単にだが説明した。後でもっと詳しく相談するつもりだ。
「御酒ももろみだと、舌にぴりっと来るでしょ?」
「ああ、ありますな。私たちは気と呼んでますが」
「あれを強くしたさっぱりした飲み物を作ろうと思ってるんです」
「ほう」
「酒造りでは醪に火入れってするんですか?」
「火入れとは言いませんが、熱くしてそれ以上発酵しないようにはしますな」
「それをしないでびんに詰めて、きつい蓋をしてやると気が抜けないのでぴりっとしたのが強くなるんです」
「なるほどねぇ、長年やってて考えもしなかった。やはり凄いですな、一条さまは」
「光でお願いします、一条って呼ばれることはほとんどないので」
「分かりました、光さまですな。なんなら、今ある醪で試してみますか。瓶さえあれば、ですが」
「普通に酒を入れる瓶に、きっちり蓋というかせんがができればいいんですが……柔らかい木って何かありませんか?」
針桐はりぎり、はどうでしょう、柔らかいのもありますし、栓にはいい太さかと思います」
「やってみましょう。それってどこにありますか?」
「そこら中に。近くにもありますよ、行ってみますか?」
「ぜひ!」
 針桐というのはタラノキに似た木で、日本全国に自生している。若木はとげのある均一の太さのもので、真っ直ぐな棒の先に葉が出る。大きくなると普通の木のようになるから、かなり変わったやつらだ。
「ちょっと枕部に寄らせてください、連れて行きたいのがいるので」
「ええ、構いませんとも」
 同じ宮城にあるのだから、すぐそこである。
 薬師くすしの瑠璃を連れて行くといいかと思ったんだ。いるかどうか分からないけど。
 行ってみると、いた、みんなが。
「瑠璃、ちょっといいか」
「何?」
針桐はりぎりっての探しに行くんだが、一緒に行ってくれないか?」
「別にええよ」
「じゃ、頼むわ」
 瑠璃と一緒に枕部を出た。
「連れてきました、行きましょう」
「はい。でも、流石ですなぁ」
「何がでしょう?」
 俺って何かやっただろうか。
「連れて行きたいって、めのこだとは」
「いえ、瑠璃は薬師で本草学ほんぞうがくを学んでるんで、連れて行こうと思っただけですが」
「では、あっちは?」
 常さんの目線を追うと……ゲッ、全員がいた。
 珍しく飛鳥もいるし。
「何よ、一緒に行ってくれて言ったじゃない」
「俺は瑠璃に言っただろ? ゆかりに言ったか?」
「……私たちは個にして全、全にして個」
 王蟲おうむか? それともワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンのことか。
 まあ、かねがね女子というのはそういうもんだとは思ってはいたが。
 仕方ないか。
 来るなと言った方が後々ヤバそうだから。
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