印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第3巻:page1 -
 俺たちの乗った牛車は、何回か方違えで使ったことのある寺に着いた。
 牛車の中は6人乗りに7人乗っていたから狭いし、何より騒がしいというかかしましかったな。
 大きなくすのきがあって、そこそこ立派な寺である。寺の名前を知らなかったので、ちゃんと見ておく。ちなみに、尼寺で、男子禁制だが、伊周さまと俺はいいのだそうだ。流石、最上流は特別待遇だな。
 見ると、『穏宮寺おんぐうじ』と書かれている。
 ああ、何とか宮寺だとは思ったが、おん、おだやかだったのか。読めなくて、伊周さまに聞いたのは内緒だ。
「さて、宿坊に荷物を置いたら、本堂に行きましょう」
 伊周さまが言われた。
 宿坊は当然のごとく、離れである。
 寺の人たちが住まう場所と本堂の間にあって、いくつか部屋がある。女性しか泊まらない前提だから、他の泊まり客の女性4名には男性が泊まることを了承してもらったらしい。
 藤原伊周さまと一条光さまだと伝えたら、ふたつ返事で了承したとか。
 離れには廊下があり部屋が4つ連なっていて、他の客が一番奥、一番手前が俺と伊周さま、残りふたつがうちの女性陣に割り振られていた。部屋は板貼りだが、ちゃんと囲ってあって、出入り口の引き戸にはつっかえ棒ができるようになっている。これを用心棒といい、時代劇の用心棒の元となるものだ。
 荷物を置くと、伊周さまと本堂へ向かった。
 他の泊まり客は既にいたが、うちの女の子連中はまだだった。
 それにしても、かなり見られているな。ひそひそ何か言ってるし。まあ、伊周さまだもんな、仕方ないだろう。
 前にも思ったが、この寺の仏像は変だ。
 というか、本当に仏像なのだろうか?
 寺の人に聞いてみよう。
「あの、すみません」
「はい、何か?」
「これって、仏像ですか?」
「ええ、そうです。穏宮寺名物の足なし弥勒像ですが」
「何で足がないんでしょう?」
「何でもこれを作った仏師によると『足なんてただの飾りだ、偉い人にはそれが分からないんだ』とかで」
「仏さまというか、お釈迦さまって、足が大事ですよね」
「はい。足の裏には毛が生えていると言われています」
「直さないんですか?」
「もう名物になってしまいましたから、変えないそうです」
 言っていることはよく分からないが、まあ、聞いたことのあるセリフではある。そういえば、穏宮寺だもんな。
 そんな話をしていたら、やっとうちの連中が現れた。諾がいなかったら、もっと遅くなっていただろう。「ほら、お嬢さま、伊周さまがお待ちですから」とか言ってたし。
 人が集まったので、やおら説教が始まった。
 女性の立場からの話が主だから、男としてはどうなんだろう。女性には興味深いことは言ってるようで、女の子たち(玉藻以外)はけっこう真剣に聞いていた。やつら女なんて所詮クソ袋というのには怒ってたなぁ。意味を聞いてなるほどとか言ってたけど。
 仏心ぶっしんにおいて容姿は関係ないというのだ。だが、俺には大いに関係あることで、平安美人には興味ないが、現代的な基準での美女とか美少女は大好きである。
 話しが終わって、聞きたいことはないかというので質問してみた。
「あの、男の容姿とか地位ってどうなんでしょう?」
「関係大ありですね!」
 講師(こうじ)に言い切られた。
「じゃ、容姿、財産、地位、愛情だったら、どういう順番になりますか?」
「まず、財産です。次が地位、容姿、最後が愛情です。当たり前のこと聞かないでください」
 愛情と言うかと思ったのに……
 さやにそっくりな声だが、かなりキツくした感じだからか言うことが辛辣だ。
「いいですか、愛情はいずれ失われますし、容姿も変わります。地位だってどうなるか分かりません。財産は余程のことがなければ無くなりませんから」
 えらく即物的だな。
「女性は容姿じゃないんですよね」
「そうですよ。美人なんてクソ喰らえです。どれだけ仏に帰依きえしているかのみですから」
 ああ、この人きっと色々あって尼寺に入ったんだろうな。
 関わっちゃダメだ。
 伊周さまを見ると、眉をしかめて首を横に振っていた。やつらにも悪影響がなければいいのだが。
 ここにはもう連れて来てはいけない、そう俺の魂が叫んでいた。
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