印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第3巻:page24 -
 衛姥といえども動かなければただのモニュメントである。と、言い張れくもない。白台と3体の衛姥を残し、用意された牛車に揺られ海に向かった。
 伊勢湾というと伊勢エビ、アワビ、ハマグリや蟹など、美味いものがいっぱいある。御食みけつ国と言われる所以ゆえんだろう。もちろん、若狭にも、瀬戸内にも美味いものはたくさんあるのが分かるから、3方からの流通をスムーズにしたいのだが。
 どうせなら信長も連れて来たかったな。助け出したらまた来よう。
 船で沖に出るというのではなく、海沿いを観光し、海女あまが漁をしているところに行き着く。
『海人』と書いてアマだったのが女性が多く従事したことで海女となったのだろう。現代だと海人は『うみんちゅ』と読まれそうだが。
 潜水して漁をすることをこの辺りでは『かずく』と言う。『かずく』と書くが、『かずく』と同源とされ、『かつぐ』とも似た言葉らしい。海に潜って魚介類を担ぎ出すということなのかもしれない。
 取れたての、伊勢エビ、アワビなどを炙って食した。
 んー、来てよかったなぁ……
 いや、目的が違ってないか?
「まま、一献いっこん
「あ、すみません」
 美味い!
 本当に、来てよかった。
 ゆかりたちも楽しそうだ。あ、あんまり飲ませないでくださいね。
 玉藻は伊勢エビを固い殻ごとバリバリと食べて現地の人を驚かせていた。まあ、羅螺が殻だけを綺麗に溶かしたのに比べれば大した驚きようではなかったが。
 このせいでか、衛姥という鬼もどきだけでなく、妖怪変化をも手下にしているという噂が流されるのだが、事実なので仕方がない。
 
『光さま、光さま』
「ん? 諾か? どした?」
『こちらは今日の夕刻には伊賀に着くようです』
「へぇー、早いな」
『はい。伊周さまが壮呂さまの安否を気遣って、のんびり宿を取ってなどいられないとおっしゃいまして、夜通し歩いていましたから。そちらは今、どこですか?』
 い、言えない。温泉の話は昨日してしまったが、そこで山海の珍味に舌鼓したつづみを打ち、今も観光しながら伊勢エビやアワビを食べつつ酒を飲んでいるなど、口が裂けても言ってはならない。
「あ、ああ、今ちょっと休んでいるけど、伊賀街道にほど近い場所に衛姥はいるから」
 まあ、衛姥だけそこに残してきたのだが。
『分かりました。では夕刻には伊賀国府で落ち合うということでお願いします』
「了解した」
 まずいな、とりあえず温泉まで戻ろう。
 国司に伝え、早々に牛車で帰った。ゆかりたちは寝ていたが、酔って衛姥に乗られても困る。やつらのアルコール分解酵素と代謝能力にがんばるように祈り続けた。
 
 不思議なもので、大抵の場合、往路いきより復路かえりの方が早く感じる。今回の場合、急ぐように言ったからなおさらだったのかもしれない。アルコール分解酵素と代謝能力がその力を見せてくれる前に到着してしまった。
 どうしよう。
 国司に礼を言い、ここからは特務組織の秘密行動だということで遠慮してもらった。
 アルコールの代謝を早めるには、水分を多く摂取して尿として排出することが一番である。後は風呂に入るのもいいとされる。
 よし、水を飲ませて、温泉に入れよう。
 たたき起こして、有無を言わせず、温泉水を飲み、温泉に入るように言う。酒を飲むと胃の中の酸度が上がるため、アルカリ単純泉の七栗の湯は効くかもしれない。胃散のペーハー調整剤は、酸を中和するのだから。効かなくても水分にはなるのは確実だろう。
 およそ2時間後、アルコール分解酵素と代謝能力の勝利を確信した。温泉も少なからず貢献したと思う。
「どうだ? 衛姥に乗れそうか?」
 頷く3人。
「じゃ発進準備だ」
 着替えと補助は諾がいないので玉藻がやっている。人払いしてから、うつぶせの衛姥に乗り込んでいった。俺も白台に跨がり玉藻を待つ。
『いいわよ』
『こっちもぢゃ』
『……私も』
「衛姥、発進!」
 動き出す衛姥。玉藻がひらりと白台に乗ってきたので、俺も後を追った。
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