印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第3巻:page44 -
「終わったわよー」
「疲れたのぢゃ」
「……お腹空いた」
 お、もう終わったのか、早いな。
 沐浴して着替える時間を考えると、相当急いで運んだんだろうな。
「光さま、木の移動が終わりました」
「ごくろうさん、ちょっと休んでてくれ」
 塩をしておいた菜に水を入れ、少し塩出ししてから絞る。
 鍋に水を入れ、酒粕を溶かしながら加熱し、溶けたら味噌を入れ、ふつふつしてきたら菜を入れて炒り、水分を飛ばす。
 あざらというのに似ているが、魚は入れない、お袋が作っていた料理だ。
 適当なところで火から下ろしておく。
 飯はぴちぴち言わなくなったので火を落とし、じっくりと余熱で蒸らす。
 ダッチオーブンが冷めてきたので蓋を取った。意外にちゃんと焼き上がっている。食べるとサクっとしてすぐになくなる。甘葛なので上品なほんのりとした甘さだった。
 作ったふたりにも食べさせる。
「美味しい!」
 あ、こら、それは言うなって。
 ハイエナの群れが一斉にこちらを向いていた。
 
「らーらー」
「そうね、これなんて羅螺そっくり」
 そう、狙われた獲物は既に口の中である。
「何で今まで作ってくれなかったのよ!」
「……さくっとした歯応えと、ほんのりした甘さが口の中で溶けていく」
「うむ、これはめのこなら誰でも大好きぢゃな」
 評判がいいので、作ったふたりも喜んでいるから、まあいいか。
「美味しいですね、これ何ていうものですか?」
 うん、メレンゲを焼いたのだが、何て言うんだったっけ? 確かに羅螺っぽい形をしている。
「羅螺焼き、かな」
 適当に思いつきで言った。
「羅螺焼きやて」
「らーらー!」
「あたしを焼かないでよ、だそうです」
 あっという間に全部なくなってしまった。
 さて御飯をおひつに移すか。
 現代ではプラスチックのおひつが使われるが、これは白木でないといけない。余計な水分を吸収し、なにより露が付かないからだ。
 準備が調うのを待っていたかのように、伊周さまがいらした。
 いつものように、お膳の用意と、手洗いが励行される。
 枕部では食器を洗うのが大変なので料理は個別ではなく、皿鉢さわちや大皿に盛って、銘々皿に取るという方式を採用しているが、みんな慣れたものだ。
「こっちのは漬け菜の酒粕炒りで、そっちは鴨の葱マヨネーズ和え、それはねぎ味噌です。漬け物もご自由にどうぞ」
「いいですね、こういう飯も」
 伊周さまも好みに合ったらしい。あっという間に完食。
 食後のお茶を淹れる。
「……満足」
「羅螺焼きはご飯の後にすれば良かった」
「ぢゃな、また食べたいものぢゃ」
「何です? 羅螺焼きとは?」
 低い声で言って伊周さまが俺を見ていた。
 し、しまったぁ!
「さっき、モトちゃんたちの練習で作らせた座興のようなものでして」
「原子、それは美味しかったですか?」
「うん、お兄ちゃん! あたし初めて作ったけど、上手にできて、すっごく美味しかったんだから!」
「何……ですって?」
 ギロリと俺を睨む伊周さま、こういうところは道隆さまの血を感じる。
「あの、伊周さま、明日、明日必ずお作りしますから。俺が作りますから!」
「分かりました。いいでしょう。楽しみにしてますよ」
 ご機嫌が戻られたようでひと安心だ。
 ふぅ。
 それから俺は祈り続けた。
 明日も玉子がありますように、と。
 ではまたと伊周さまはお戻りになられた。
 
 もしこれが気に入ったら、玉子を使うというのも問題なくなるのではないだろうか。メレンゲの羅螺焼きと、マヨネーズは絶対にヒットするだろうから。
 そうなると、伊周さまに気に入ってもらって、道隆さまや主上おかみにも気に入られればいいわけだ。定子さまやさやにも食べさせたいしな。
「みんな、聞いてくれ。新鮮な玉子が必要になった。探して集めて欲しい」
「ねえ、それってまた羅螺焼きを作るってこと?」
「……米酢よねずも」
 そう来たか。でもそれだとただの米酢じゃないか?
「とにかく探すのぢゃ」
「生みたてじゃないとダメだからな。それから盗むなよ。お前らの家にあるのをまず探してくれ」
「「「了解!」」」
 うちって、食い物で繋がっているように思うのは俺だけだろうか。
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