印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第4巻:page5 -
「ご主人さまのお帰りです」
 遠くでそう言ってるのが聞こえた。
「あ、行かなきゃ。光もあかねも行くのよ!」
 伊周さまのところではなかったのだが、この家では、道隆さまがお帰りになられたら出迎えないといけないのだという。
 もうみんな集まっていて、一番前にはモトちゃんのお母さんがいた。手招きされたので行くと、ここに立っていろという。一番前だ。
「あの、お母さん、俺ってこんな前でいいんですか?」
「お母さんやて、気ぃが早いこと」
「いや、そうじゃなくて」
 最後まで聞けなかった。道隆さまが入っていらしたからである。
 立ってろと言われたので立っているが、やっぱり頭は下げるよな。モトちゃんや使用人は正座して頭を下げていた。
「お帰りなさいませ」
 モトちゃんのお母さんがそう言うと、他の者たちが一斉に「「お帰りなさいませ」」と言ったので、俺も一拍遅れて「お帰りなさいませ」と言った。
「うむ、今帰った。光源氏、ついて参れ」
「はい」
 道隆さまの後をついて行って入ったのはいつも来ていた部屋だった。すぐにお膳が用意され、御酒と杯が運ばれて来た。俺の分もある。
 道隆さまが杯を持ち上げられたので、パブロフの犬状態で御酒をお注ぎする。
 一気に飲んで、杯を差し出された。これはお前も飲めということで、毎度の儀式みたいなものだ。
 酒をなみなみと注がれ、俺は3口かかってやっと飲み干した。
 いつの間に来たのか、モトちゃんがとなりにちょこんと座っていて、道隆さまはちょっとだけ酒を注がれ、モトちゃんはそれを3口で飲んだ。
 いや、待て、大丈夫だ。三三九度というのは江戸以降のもので、その起こりは戦国の出陣式にあるはずだ。が、一抹の不安がないというと嘘になる。
「わっはっはっ、よし、光! お前は今日からわしの息子同然だ!」
 呼び方が変わってるし。
「それって、俺はモトちゃんのあにということですか?」
「む? それはと言わねばならんのだぞ」
の君……」
 現代と同じ兄弟姉妹が成立するのは安土桃山時代からなので、混乱を避けるため通常は現代語での表現をしている。俺が言ったあには現代語、道隆さまとモトちゃんが言ったは平安語なのだ。
 実は平安時代の妹兄いもせ(妹背)は夫婦(恋人)のことで、特にいもは『ハニーhoneyシュガーsugar』とほぼ同じで『いもうと』の意味を持たない。ただおとは性別に関係なく年の上下、あるいは時間的な上下(前後)を指す言葉である。これに妹が女兄弟を表す(姉の意味も含む)ようになり、最後に姉が加わって兄弟姉妹が完成したのだが、妹の旁が末だったため年下となったのだろう。
「とはいえ、すぐでなくともよい。いずれにせよ原子が大人になってからだ」
「そう、ですね」
 嫌だとも言えないし、分かりましたとも言えない。
 ふと恐ろしい光景が思い浮かんだ。それは断って道隆さまが激昂されるより酷いもので、俺が承諾したことに激昂した玉藻やゆかりたちの衛姥が暴れまくっている光景だった。これって、どっちを選んでもデッドエンドじゃないか。
「よし、飲め! わしも飲む!」
 俺だって飲みつぶれたい気分だ。
「あの、水を差すようですが、お酒を飲むなとは申しませんが、ほどほどにしてください。このままでは病に冒されます」
「む! む? そうか、お前が言うのではいたし方あるまい。では何か作れ」
 またそういうことを。
「今からでは……少しお待ちくだされば、取って参ります」
「うむ」
 俺は立ち上がると、枕部を目指した。
「あたしも行く!」
 モトちゃんも同行するらしい。まあいいけど。
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