印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第4巻:page7 -
 道隆さまは結構気さくで冗談も言われる人である。
 仕事中は国の中枢だからそんなことはないが、家で酒を飲んでいる時はさして怖くない。声があれだから怒っているようにも聞こえるだけだ。最初に謁見したときだって、わざと舐められないようにしたとか言っていたのだから、結構お茶目でさえある。
「あの、ふと思ったんですが、貴子さまはタカコで、原子ちゃんがモトコで、何で定子さまはサダコじゃないんですか?」
「何やなあ『サダコて何、ウチいややわ、テイシの方がまだマシやし』とか言うてたけど」
「そうそう『ええなぁ、モトコやて。ウチなんかサダコやで、イヤんなって来るわ』って言ってた」
 ふたりとも流石に家族だな、定子さまそっくりだ。唇をとんがらせて言っている姿まで目に浮かぶほど似ている。でも名前を付けたのは道隆さまなんじゃないかな。目の前にいるのに、そんなこと言っていいんだろうか?
「わしがジョウシでもいいと言ったら、『やっぱりウチはテイシでええわ』と言いおったわい」
 み、道隆さままで定子さまの真似を! に、似てねぇ!
 結構長く続いた宴だったが、明日は大事な日なので休ませていただきますと部屋に戻った。
 
 翌朝、首を長くして待っていた日がついに来た。
 牛肉の日!
 俺がいるのは音流府である。
 この日のために、音流府に調理台をしつらえさせた。牛の死体(肉だけど)を置いて調理台を作っても誰も文句を言わないのだから寛容な組織だな。冷蔵しているわけではないからどうかと思ったが、玉藻が薄い霊気れいきの幕で覆ってくれたので、腐敗することも虫が付くこともなく、熟成だけが進んでいた。妖気ようきじゃなくて霊気なのは、陰陽師の技も使っているからだとか。音としても陽気ようきより冷気れいきの方が相応ふさわしいし。
 これって、俺とかにかけたら暑くなくなるのかと聞いたら、多分冷たくなると答えたので、じゃやってみてくれと頼むと、息はできませんがいいですかと言うのでやめておいた。冷たくなるってそういう意味だったんだ。
 解体を始めようとした刹那せつな、大声でそれを制する者がいた。
「お待ちください! ご主人さま」
「玉藻か、脅かすなよ。これを切っちゃだめなのか?」
「まだ霊気が残っていますから、触ると嫌な匂いがします」
 まあ、俺が書いた『さわるな』以外に『さわるとくさい』というのが貼ってあったのだが、これってマジの意味だったのか。『くさる』の間違いかと思ってたんだが。多分、その嫌な匂いとやらの元は触った人の指とかなんだろうな。
 玉藻がしゅを呟くと、肉から霧のようなものが出て消えていった。
「もう大丈夫です」
「そうか」
 すぐに作業したいのだが、どうしても気になるので聞かなくてはならないことがあった。
「で、それって何?」
 俺が指さしているのは、玉藻の両肩に載るエメラルドグリーンの物体である。羅螺ららにそっくりだが、ちょっと小振りで、それがふたつもあった。
ぁとぁです」
「らー」
「らー」
「何でこうなった」
 驚きと叱責を合わせた声音になった。
「分かりません、朝起きたらふたつに別れていて」
 がっちゃんか!?
「よし、俺に任せろ。羅ぁと螺ぁ、俺は羅螺に会いたいから、ひとつになってくれ」
「「らー!」」
「何むちゃ言ってのよ、だそうです」
「失敗か。よし、玉藻、くっつけてみろ」
 玉藻はぎゅーっとくっつけるが、ひとつにはならない。
「じゃ、上下に重ねて揺するとかしたらどうだ?」
 これもダメ。
「「らー」」
「多分、あのとき飛鳥に鬼切で切られた後遺症じゃないかな? また何かの拍子に戻れると思うから大丈夫よ、だそうです」
「さっきに『らー』には、そんなに長い意味があったのか!?
 よし、放っとこう!
 やっぱり牛肉だ。
 羅螺とはいつでも遊べるから。
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