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Update 2014-07-01
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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第4巻:page29 - |
肉はそれなりだが、茄子は異様な早さで食されていく。揚げ浸しだと食べやすいからな。まあ、そのうちのかなりは詮子さまが召し上がったと思う。
「この味噌に漬けたのは美味しいですね」 「ありがとうございます」 「ウチも茄子が食べたいのに、ウチが取ろうとすると詮子さまが睨みはるから取られへん」 口を尖らせて定子さまが愚痴られた。 「大丈夫ですって、詮子さまの分はまだ沢山ありますから」 帝と定子さまに揚げ浸しを取って差し上げた。 「これはいいですね、さっぱりした酸味と揚げた茄子が良く合ってます」 「ホンマやわ、これならいくらでも食べられるなぁ」 「光、こっちゃおいない」 詮子さまだ。どっちモードなんだろう? 「あんた、とんでもないもの食べさせたわね」 あ、そっちモードですか。 「な、何をでしょう?」 「この茄子よ、毎日食べたくなるじゃない」 「そんな大げさな。他にも茄子料理ってありますよ」 「じゃ、作ってよ、約束だからね」 「分かりました」 「まあ、光、こっちに参れ」 今度は道隆さまだ。 「いかがでしょう、今日の料理は。お口に合いますでしょうか」 「うむ。酒に合うな。お前、何やら新しい酒を造るそうだな、常のやつがそう言っておったぞ」 「はい、試しなのですが、やっておりまして、明日はその仕込みに行く予定になっています」 「そうか、わしの分もあるのだろうな」 「もちろんです。というかそれを作るように言われたのは伊周さまですから」 「む、伊周だと? なるほどな」 「お分かりになったので?」 「光、お前は良いやつじゃな。まあ、飲め!」 断れるはずもなく、かなりな量を飲まされた。俺だけ空きっ腹だというのに。 「光、大丈夫ですか?」 「はい、伊周さま。あ、ご報告が遅れましたが、明日、例の酒を仕込みに参ります」 「聞こえましたが、私は行かなくていいのですか?」 「えっと、またですね、連中も行くと言ってまして、それでもよろしければいらしていただくのは嬉しいのですが」 「では、私は馬で行って、馬で戻ります。もし遅くなるようでしたら、荘園に泊まってもかまいませんからね」 「ありがとうごさいます。明日は馬で同行させていただきますので、ご出発の際にお声がけください、枕部におりますので」 「分かりました」 伊周さまは、同行するというのが嬉しかったようだ。 「光、おいない!」 「あ、はい、詮子さま」 詮子さまの前にお膳がもうひとつ、俺のだよな。 「食べないで飲んじゃだめよ。さ、食べて、食べて」 「はあ、いただきます」 「さ、飲んで、飲んで」 「はい、いただきます」 「で? 新しい酒って何?」 「あ、聞こえちゃいましたか。伊周さまの荘園で試しに新しい酒を造ってみることになってまして。内緒ですけど、詮子さまのために造るものですから、失敗したら終わりですけど、ちゃんとしたのができましたら、一番最初に詮子さまに飲んでいただきます」 「ふーん、伊周がねぇ。まあ、変な貢ぎ物されるよりいいけど」 「俺としては、伊周さまもそうですが、定子さまとも仲良くなっていただきたいですが」 「そうね、前にもそんなこと言ってたわね。大丈夫よ、嫌われてないなら嫌わないから」 「複雑ですね」 「女ってそういうものよ、覚えておきなさい」 「肝に銘じます」 「さ、食べて、食べて、飲んで、飲んで」 「はい」 「母さま、それくらいで。光は疲れてるでしょうから、ほどほどにしてやってください」 助け舟は帝だった。詮子さまに何か言えるって、帝か道隆さまだけだろう。光って言われたのは初めてかもしれない。 「うむ。光は大事な婿だ、ほどほどにしてやってくれ」 道隆さまも言ってくださったのだが、婿確定らしい。 「そうなの? 誰と? 定子のはずがないから、原子よね。そうなんだ」 もう、逃げ道が、ない、よな。 「こちらへ、光」 帝からお声がかかった。 |
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