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Update 2014-07-01
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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第4巻:page42 - |
牛車に乗せて、俺は白台を祈りながら走らせた。もう誰も出てくるんじゃねぇぞ、と。
誰に会うこともなく、無事に京に着き、白台を戻すと枕部に向かった。 目立たない場所で、社か鳥居を置ける場所を探す。小さくていいって言ってたな、ふと考えが浮かんで修理職に向かった。 鏡を頼んだ職人を探したいのだが、名前が分からない。前にいた場所に多分いるだろう。 「光さま、どうされましたか?」 いた。向こうから声をかけてくれて良かった。顔もよく覚えてなかったから。 「ちょっと欲しいものがあって、作ったものとか見せてもらうな」 「ええ、どうぞ」 仏像や仏具などをやっているところなので仏像もあるが、建物の部品にする彫り物などもある。これがいいかというのがあった。 「これって何?」 「御輿の部品です。稽古で作ったものなんで、あまりいい出来じゃないんですが」 「もらっていいかな」 「ええ、そんなものでよければ」 「うん、助かる」 小さい鳥居と社っぽいのをもらった。 「あの、鏡もできていますが、どういたしましょう」 仕事が早いな。 「そうだな、全部持つのはちょっと大変だからそのうち取りにくるよ」 「なんなら、私が持って行きますが」 「あ、そうしてもらえる?」 鏡を持ってもらって、枕部まで一緒に行くことになった。 鏡を置くと、俺がなにをするのか興味津々の様子である。 「これさ、棚に奉るんだ、神棚」 「神棚とは聞いたことがありませんが、よかったら私が棚を作らせていただきますが」 「ああ、ぜひ頼む」 板やら道具のところに案内すると、すぐに作業を始めた。 彫り物をやっているらしいが、大工仕事も素人以上にできるようだ。当然か。 社を棚の真ん中奥に、その手前に鳥居を置いた。 何か寂しい。 白磁のとっくりに御酒を少し入れて、両脇に置いてみた。うん、それっぽいな。 紙をちょきちょきと切って、ピカ○ューの尻尾みたいなのを作って下げてみる。 表に出ると、内裏の中まで行って、榊をちょっと切ってきた。何してんだろと注視する門番の視線が痛い。舎人がいたので、主上に光が戻ったと伝えてくれと頼んでおく。 社の両脇に榊を置くと、かなり雰囲気が出た。 「なるほど、小さい神社ができましたね」 「うん、いい感じだな」 作ってもらった鏡も見ておくか。 「凄いな、白木だけど立派なもんだ。黒漆とか塗ったら国宝級だな」 「単純な模様の方がいいと思ってこうしましたが、いかがです?」 「うん、最高だ。また頼んでいいか?」 「もちろんですとも」 職人は帰っていったが、また名前を聞きそびれた。ま、いいか。 よし、飯だ。 食料庫へ行ってみる。 ちゃんと扉も付いて、棚もできていた。食料も並べてくれたようである。 あんまり在庫がないなぁ、食料庫もできたから、明日にでも買い出しに行くか。 小豆を取り出した。採れ立てのやつだから美味いと思う。 厨房に行って、水で表面をよく洗う。 水を張った鍋に小豆を入れ、火を点けて煮立たせる。5分ほど沸騰させたら、火から下ろしてもう一度洗うが、これは渋みを取るためだ。また水から煮て、5分くらい沸騰させたら火を弱めてことこと煮て柔らかくする。 その間に、もち米を蒸しておくが、これはちょっと軟らかめに仕上げる。 ちなみに赤飯じゃない。 小豆は完全に柔らかくなってから甘みを加える。この時代は塩味が普通だが、水飴を山ほどもらったのでそれを使わない手はない。何度かに分けて甘くしていった方が染み込む。 小豆がいい感じになったので、水飴を入れて、弱火で溶かしていく。これを3度。最後に塩もひとつまみ。しばらくしたら火から下ろして冷ましておく。 米が蒸し上がったので、大きな木桶に移して、少し塩を振り、半殺しにする。餅までにならず、粒のままでもないという状態だ。 おはぎである。 伊勢に赤福という名物があるが、あれはぼた餅でこしあんだが、作っているのはおはぎでつぶあん、これを似ていると思うか、まったくの別物と思うかは人によるだろう。秋は小豆が採れ立てなのでつぶあんのおはぎ、春は日が立って皮も固いのでこしあんのぼた餅なのである。もうひとつの理由を書くと食べられなくなるかもしれないので割愛。 神さまが何を食うか分からないが、伊勢の赤福、秋だからおはぎという発想だったのだ。 |
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