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Update 2014-07-01
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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第5巻:page4 - |
佐渡では「ちゃ」や「だっちゃ」が付くが、必然的に脳内補完により少しばかりトラ縞ビキニ鬼娘に近づけてしまっているかもしれないがご容赦願いたい。
「そりゃ、嫁っこになるためだっちゃ」 「あ、じゃ、がんばってください。あかね、行こうか」 「なあ、おめら京がどっちか教えてくれっちゃ」 「分からないで歩いてたのか?」 「さっき聞いだら、もうちょっと南だと言われたっちゃが」 「ここからだと北だぞ、お前、もしかして方向オンチか」 「京の言葉はよく分からんちゃ、少ぉぅしだけ遠回りすることはあるっちゃが」 「どうする、あかね」 「そうですね、困ってるみたいですし、佐渡から来たというなら見捨てるのも可哀想ですし」 「だな。京はあっちなんだが……なん、だ、あれは?」 京の方を見ると空に何かが浮かんでいた。蛙の卵のようなものが渦巻いていて、きらきらと光る無数の点と、巨大な衛姥。 何やってんだ、あいつら! 「そこの人、悪いけど俺は行かなくちゃならなくなっちゃったっちゃ。あかね、申し訳ないのだが、ここから歩いて、その人を京まで案内してくれるか?」 「分かりました」 「じゃ、頼むな!」 言うが早いか、白台で人生初の襲歩を経験した。 近づくと、幸いなことに京からは少し外れたところだった。人的被害も家屋倒壊もなさそうである。ちょっと木がなぎ倒されていたくらいで済んでいる。 一安心。 俺が近づくと、きらきらした光が一斉に寄って来て、次に蛙の卵のような浮かぶものが、こちらに流れて来た。光は近づくと人の形をしていて、蛙の卵の方は何やら不気味な形をしていた。物の怪? 光の中から声が挙がった。 「見つけたどぉ!」 それが伝播して行き、「見つけた、見つけた」の大合唱となった。光が周りを取り囲み、俺は白台から離され、上に持ち上げられていく。 脳内ではヘンデル作曲ハープシコード組曲第2番第4曲サラバンドが流れていた。 周り一面が光っていて、まるで金色の野を歩いているようだ。 いつも思うのだが、こういうのに慣れてきたのか、自分でも余裕があるなぁと感心する。と、光の草原を歩いた先には、巨大な衛姥が3体待ち受けていた。 「しぎゃーぁ!」 あ、初めて声を聞いた。衛姥ってこういう声なんだ。食われるのかとも思ったが、そうでもなさそうだ。衛姥は小さくなっていった。それに合わせて金色の野も下がって行き、ついには地上に降ろされ光は消えてしまった。上空に渦巻いていた蛙の卵もなくなっている。後で聞いたらこの光は八百万の神で、蛙の卵は百鬼夜行だったんだそうだ。ただ、百鬼夜行が何なのかよく知らないのだが。ちなみに、このことがあって、神さまたちは毎年十月に集まるようになったという。 衛姥は地面に伏せると、ぬるんとゆかりたちが出て来て、一斉に飛びかかって来た。 く、臭い。血の臭いだ。べとべとで、そしてなぜかタマネギっぽい。 見ると、みんな泣いていた。 「どこに、行ってたのよ、心配した、じゃない」 「もう、会えないかと、思ったのぢゃ!」 「……ごめんね、ごめんね」 しずかが何を謝ってるのか分からないけど、まあいいか。 俺は泣きじゃくっているみんなの頭をなでていた。 「ご主人さま、ご無事で何よりです」 「ダメですよ、黙って勝手に行っては。行くなら一緒でないと」 那美はいつでも微妙に下ネタっぽいな。 「はあ、俺ってそんなに悪いことしたっけ?」 「あかねと、心中なんて、しないで!」 「え?」 「あかねが、いないのぢゃ」 「ああ」 「……あかねだけ、死んだ?」 「なんで?」 聞くと、みんなで盛大に勘違いした挙げ句の所業だったらしい。何で早朝に出たのかは墓場まで持って行くと決意した。 羅螺がこのべとべと粘液を溶かせるかと試したら、羅螺がちょっと溶けてメロンぽい良い香りがしただけだった。 仕方ないので玉藻から石鹸と着替えを持って来てもらい、河原まで行って体を洗う。水が冷たくなったな。那美は関係ないと思うのだが、一緒になって沐浴していた。その神々しい姿に言わずにはいられなかった、ありがとうございますと。 着替えて京に向かう頃には、既に衛姥の姿はなく、京では騒動の発端は鬼が現れたのだと噂されていた。これは、さやと諾による情報操作のおかげだったらしい。 衛姥の3人は詮子さまからこっぴどく叱られたのは言うまでもない。 |
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