印Let's Write The Japanese First Light Novel.
Since 2012-06-01
Update 2014-07-01
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第1巻 時間と歴史

第2巻 羅述と衛姥

第3巻 事件と救出

第4巻 牛肉と麦酒

第5巻 旅路と佐渡


主要キャラ 画像



枕草子 原文 全323段




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- 【俺のラノベは平安絵巻】 第5巻:page39 -
 翌朝、蓮湖に向けて出発である。今日は夕月と朱鷺が乗ってきた。
「うちは別に向こうでいいっちゃが、くじだから仕方なく乗ってやるっちゃよ」
「私は嬉しいです。光さまとはあまりお話できませんでしたから」
「だな。料理のときはいつも一緒だけど、話はしてないもんな」
 国司以下、同行するのは馬に乗って行く。
 ここからも休み休み、駅に着いたらお茶を飲んだりしたが、昼前には蓮湖に着いた。
 見物して、横山駅に行って朝食となった。昨日の夕食と違って、漁師が作ったという料理は良かった。こういうのがいいんだ。
 色んな魚だのエビだのが入った汁は、塩味だが美味かった。まあ潮汁うしおじるだから元から塩味なのだけれど。多分、これは世界共通の料理ではないだろうか。ブイヤベースなどという小洒落た料理もあるが、あれは王侯貴族でもなければ食べられないものだろう。この時代に各種の香辛料をふんだんに使ってなどというのは、地元の漁師が気軽に作れるはずがないのだ。
 魚介類をごった煮にして、塩味を付ける、これが一般的な漁師料理に違いない。胡椒だって、スーパーや百均で気軽に買っているが、百円で買える量でさえ、中世ヨーロッパでは牛一頭の価値だったのだ。
 よし、分かった。漁師料理は美味い!
 
 食後、番茶を淹れて振る舞った。この香ばしさはいいよな。
「これが番茶ですか」
「ええ、茎茶とか棒茶というのを焙じたもので、何度か採った後に最後の方に採るから晩茶と言われ、それを焙じたものは番茶といいます」
 字面も説明した。忠頼さんはかなり気に入ったようで、詳しく話を聞いてきていた。
 団茶は作らせているが、今度は番茶をやってみたいということらしい。
「これだけのめのこを連れ歩くというからどんな輩かと思ってましたが、想像と違ってました」
「そんなに変ですか?」
「いえ、私の勘違いでしたから。これは光源氏さまの人徳によるのだと、よく分かりましたから」
「人徳なんかありませんけど」
 遠くから声が掛かった。モトちゃんだ。
「光ぅ! ちょっと来てぇ!」
「ああ、今行く」
 国司に少し行って来ますと言って、呼ばれた方に行った。
「ほら、これ」
「ああ、カマキリの卵だな」
 カマキリは蟷螂と書き、『蟷螂の斧』ではトウロウと読む。
「これがそうなんだ。何かと思った」
「この卵が低いところにあると雪が少なくて、高いと雪が多いって言われているな。今年は少なそうだ」
「カマキリって食べれる?」
「いや、どうかな。俺は食わないけど。カマキリにはハリガネムシというのがいるから、食べるならよく加熱した方がいいと思うそ」
 カマキリ、バッタ、ゴキブリなどに寄生しているハリガネムシは、水に浸けるとむにゅうと出てくるらしい。
「光が食べないものを食べるわけないじゃない」
「まあ、食いたくはないな」
 この時代の蓮湖は汽水湖である。現代の河北潟は干拓のために淡水湖となっているので、生態系がまったく違っている。
 ここは元は海で、手取川から流れてきた土砂が海流に流され、能登の方へ行く途中で堆積し、現代から二千年前くらいに潟湖となったらしい。
 フナ、コイ、ウナギなどがいて、水鳥も多い。水辺が好きなのは、そういう場所で人類が暮らしてきたかもしれないが、それ以上に、こういう場所から地上に上がったという生命の歴史からかもしれない。
 海で生まれた人類の祖先は、汽水、淡水に長い年月をかけて入り込み、両生類へ進化し、その後、爬虫類、ほ乳類へと進化していったのである。脊椎、つまり背骨ができたのは、魚だった頃、この淡水で生活する上でのカルシウム貯蔵庫のためだとされている。また、深い海では海底にいることは少ないが、川では川底がすぐにあり、枝葉などの障害物もあるため、ヒレを足として使うようになり、乾期には酸素が不足することもあるため、肺呼吸の能力も得たという。脊椎、足、肺呼吸、これらは淡水に入ったために必要になったのである。
 だから、そういう場所が好きなのかもしれないと思ったのだ。
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